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現在、NHK連続テレビ小説100作目となる『なつぞら』で、ヒロインを演じる広瀬すずさん。女優デビューから6年。着実に演技経験を積んできた広瀬さんに、演じることへの向き合い方を伺いました。

なつと同じ“しっかりした子ども”だった

——NHK連続テレビ小説『なつぞら』でヒロインを演じていらっしゃいます。長丁場で大変だと思いますが、撮影はいかがですか?

毎朝、早く現場に行きたい!と思うくらい楽しいです。台詞(せりふ)量も多く、乗馬やスキーなど練習すべきことがたくさんあって、休む暇がないのは確かなのですが、思ったほど疲れもたまらず、周囲からは驚かれています。

「全力合“爽”部」を創立。部員1,000人と記念撮影
「全力合“爽”部」を創立。部員1,000人と記念撮影

——広瀬さんは小学生のころから中学生までバスケットボール部に在籍されていて、1日8時間も練習していたと伺ったことがあります。体育会系というか、体力がおありなんですね。

はい、体力だけは異常にあります(笑)。数日間は寝なくても大丈夫なんじゃないかと思うくらいです。それに、『なつぞら』は、ストーリーがとても面白く、台詞を覚えるのが楽しくて。モチベーションが高いから、疲れを感じないのかもしれません。

——ヒロインの奥原なつは戦災孤児ですが、北海道の開拓者精神に富む大人たちのもとでたくましく成長し、その後は女性アニメーターとして活躍する、という設定です。役づくりはどのようにされているのでしょうか。

私は、役柄を作り込んで演じるというより、私自身で役柄を生き、感情を生み出していくことを心掛けています。もちろん、寡黙な役やはじけた役のときは、誇張して演じることもあるのですが、奥原なつは自然体で表現できればいいな、と。なつにはこれからいろいろな出会いがありますし、年齢も重ねていきます。役柄を作り込んでしまうと、なつが成長するに従って自然に変化していくはずの感情にブレが生じてしまう気がして。それを避けるためにも、その時々のなつの感情を私自身のなかに入れていって、自分の言葉として発信するような感覚で演じています。なつが笑うときは私自身も笑っている。ですから、視聴者のなかには “まんま広瀬すず”と思う方もいらっしゃると思います。

——朝ドラが始まるときのインタビューで、「台本を読んだとき、涙が出てきた」とお話しされていましたが、ヒロインに共感するところがあったのですか?

あります。私は小さい頃から両親が働いていたので一人で過ごすことが多かったんです。

「全力合“爽”部」の1日限りの部活動。SHISHAMOの3人と駆け足で入場。
「全力合“爽”部」の1日限りの部活動。SHISHAMOの3人と駆け足で入場
部活動では部員たちとパワフルなコラボレーションを披露。
部活動では部員たちとパワフルなコラボレーションを披露

ドラマの台詞にもあったように、ほんと、“しっかりした子ども”だった気がします(笑)。保育園から帰るときも、家の近くまで友達のお母さんに送ってもらい、自分で鍵を開けて家に入り、両親や兄や姉が帰ってくるまで一人でお留守番。小3でバスケットボールを始めるまではそんな感じで、遅く帰宅する家族のためにお風呂の準備をしたり洗濯物を片付けたりもしていました。なつという役をもらってから、そういえば、学校で嫌なことがあっても、家族が帰ってくるまで、一人耐えていたな、なんて思い出したりしました。育った環境は違いますが、似ているところがあると思います。

演じるためには実体験も必要

——自分の中にある感情を思い出したり、分析したりすることは、お芝居をするうえで欠かせない作業なのですね 。

そうだと思います。自分が感じたことや、そのときにあふれた思いすべてを役につなげていくのがこのお仕事だと思うので。
まだ経験がほとんどないのですが(笑)。ラブストーリーでは、好きな気持ちだけでなく、相手と別れたときのつらさや、好きでもそばにはいられない気持ちなど、さまざまな感情を表現する必要があると思います。頭でイメージし、台本に書いてある通りに演じてもリアリティーがあまりないかなと……。先輩から、「恋愛はしたほうがいいよ」と言われることが多いのは、やはり実体験も必要という意味なのだと思います。

広瀬さんの熱唱に見とれる部員のみなさん
広瀬さんの熱唱に見とれる部員の皆さん

——多くを経験することで演じるための引き出しを作りたい?

そうですね、いろいろと経験できればいいな、と。もちろん、与えられた役柄をとことん考えて作り込み、そうした役づくりから感情をリアルに表現できる方もいらっしゃると思うのですが、私は性格的にできない気がします。泣くシーンだとしたら、「今、私、泣こうと頑張っている?」と、一歩引いて、“役になり切ろうと頑張っている自分”を見てしまう。そのまま演技を続けても、視聴者の皆さんには嘘だと思われてしまうのではないかなと。それ以前に、自分でモニターを見て「あ~あ」と、残念に思う気がします。私にとってお芝居は、考えて演じるものではなく、自ら感じ、表現するものなのだと思います。

いつか本当の私を役柄を通して見せたい

——これまで印象に残った作品を教えていただけますか?

収録では全員が全力疾走

10代最後に演じさせてもらったドラマ『anone』です。お芝居って面白い!と、心から思えた作品でした。最初から最後まで、どこにも嘘がない感情で演じられたのは初めて。気持ちを作って準備をして、というのが一切なく、現場ですべての感情が「ダダもれ」した感じです。何回演じても感情がもれてもれて仕方がないシーンがあったのですが、やらせていただいた作品のなかでも最も印象的なシーンになりました。
いまだに一番見返している作品でもあります。もちろん常に100%の力を出すのが私の仕事なのですが、演じることに慣れてしまったり、感情の出し方が分からなくなったりすることもあります。自分の力が追いついていかなくて、どうしようかと思うときにこの作品を見返すと、感情って作るものじゃないと思えてくる。共演させていただいた田中裕子さんを拝みながら(笑)、「よし、私が目指すのはこういうお芝居なんだ」と奮起しています。

——『anone』の共演者はベテランぞろいでしたね。

はい、すごいとかじゃなくて、それを超越した存在。あえて言葉にすると、「お芝居の神様的存在」なんです。信じられない感情の出し方をされるので、毎回、驚きの連続で刺激的でした。

——これから演じてみたい役柄や作品はありますか?

強い役をやりたいです。意志が強いというのではなく、きつい役、毒がある役。これまで意志の強い役、責任感の強い役はたくさんやらせていただいたので、今はもう引き出しがなくて(笑)。また、最近、『下妻物語』(2004年公開、深田恭子・土屋アンナ主演)を見返していて、こういうパンチのきいたコメディーもやってみたいなと思っています。
これまで明るい役柄や柔らかい役柄も多かったからか、お会いした方から「役柄のイメージと違い、意外とクールだね」と言われるんです。そう聞くたび、皆さん、本当の私を知らないな、って(笑)。いつか本当の私を役柄を通してお見せできたらと思います。

最近うれしかったのは、朝ドラの撮影で感情を出せたこと

——今回、ロッテ「爽」のCMでは、10代に大人気のバンド「SHISHAMO」の3人と、1,000人の高校生と共演されます(インタビューが行われたのは撮影直前)。今のお気持ちは?

高校生の皆さんがリアルに応募され、抽選で当たった1,000人でCMを作るということ自体、すごい試みですよね。CMのコンテはあってもライブ感が鍵になると思いますので、どうなるか楽しみです。私はライブ経験がほとんどないので、SHISHAMOさんに引っ張って頂きながらやりたいと思います。高校生パワーに負けないように頑張りたいですね。

『全力合“爽”部』活動報告会
『全力合“爽”部』活動報告会

——お忙しい毎日だと思いますが、健康の面で気をつけていることはありますか?

健康ネタは大好きなのですが、今は「腸活」にハマっています。「腸もみ」にも行き、食事に対する意識も強くなりました。自炊も始めたんです。以前はサツマイモが大好きで干し芋ばかり食べていたのですが、減らすようにしました(笑)。お酢や、海藻系、ねばねば系の食材を多く採り入れるようになりました。腸にハマっていることを宣伝して歩いているので、皆さんから多くの情報をいただいて、実践したりしています。

高校生1,000人との共演後「爽」を口にするひとコマ
高校生1,000人と共演後「爽」を口にするひとコマ

——最近、うれしかったことは何ですか?

一昨日の朝ドラの撮影がうまくいったこと! 気持ちいいくらい感情を出せたシーンがあったんです。その瞬間からテンションが異常に高くて、「こういう感覚でやりたかったんだ!」と気づきました。一昨日は、なつの、というより、まさに自分の感情だった気がします。監督に「もらい泣きしちゃったよ」と言われて、「やったぁ!」と思いました。

——最後に広瀬さんの好きな言葉を教えてください。

そういえば、最近、ずっと「楽しいね~」って言っています。いつだったか、現場で何十人の人が一斉に笑っているときがあって、「なんて幸せな光景なんだろう」と感じたんです。思わず「なんか楽しいね~」って口から出てきちゃったら、「そんな風に言ってくれて幸せだよ~」と皆さんが笑い返してくださった。それがうれしくて、またすぐ「楽しいね~」って。今、一番好きな言葉です!

取材・文 辻 啓子

広瀬すず(ひろせ・すず)
広瀬すず(ひろせ・すず)
1998年生まれ。静岡県出身。2012年雑誌の専属モデルとなりデビュー。13年春に連続ドラマ『幽かな彼女』(関西テレビ)で女優としてデビュー。その後、映画、ドラマ、声優、CM出演と幅広く活躍し、15年に出演した映画『海街diary』で演技が高く評価され、多くの映画賞で新人賞を受賞する。16年には「第40回日本アカデミー賞」で、初の単独主演映画となった『ちはやふる―上の句―』で優秀主演女優賞、『怒り』で優秀助演女優賞をダブル受賞。18年『anone』(日本テレビ)で3年ぶりに連続ドラマ主演。「第41回日本アカデミー賞」では『三度目の殺人』で最優秀助演女優賞を受賞、大みそかには「第69回NHK紅白歌合戦」の紅組司会も務めた。現在はNHK連続テレビ小説100作目となる『なつぞら』でヒロインを演じている。 20年には映画『一度死んでみた(仮)』『Last Letter』が公開予定。
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