カリウムは身体に不可欠なミネラルの一つで、血圧を正常に保つ効果があるといわれています。
塩分の摂りすぎは高血圧の大きな要因となりますが、カリウムには塩分の排出を促す作用があるのです。
このようにカリウムを豊富に含む食べ物が気になっているという方も多いでしょう。
この記事ではカリウムを豊富に含む食べ物や不足・過剰摂取によって生じる影響、どのくらい摂取すべきなのかを定めた食事摂取基準などについて詳しく解説します。
1.カリウムとは
カリウムはヒトの身体に栄養素として欠かすことのできない「必須ミネラル」の一つです。
「塩分の摂り過ぎにはカリウムが良い」などと聞いたことがある方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
カリウムには、高血圧の大きな要因である塩分(ナトリウム)の排出を促す作用があります。
そのため血圧を正常に保つ効果があるといわれているのです。
カリウムはそのほかにも筋肉の収縮や神経伝達などにおいて重要な役割を果たしています。
2.カリウムを豊富に含む食べ物
ここからはカリウムを豊富に含む食べ物をご紹介していきましょう。
カリウムは野菜類や果物類、海藻類など植物性の食品に多く含まれています。
なお、カリウムは水に溶ける性質があるため、食材を水にさらしたり、細かく切って茹でたりすると摂取できる量が減ってしまいます。
茹でてその汁を捨てるといった調理法は避け、レンジで加熱したり蒸したりすることでより効率的にカリウムを摂取できると考えられるでしょう。
調理法も工夫して積極的にカリウムを摂取したいですね。
2-1.カリウムを豊富に含む野菜類
カリウムは以下のような野菜に多く含まれています。
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
切り干し大根 | 乾燥 | 3,500mg |
ドライトマト | 乾燥 | 3,200mg |
アボカド | 生 | 720mg |
ほうれん草 | 生 | 690mg |
枝豆 | 冷凍 | 650mg |
人参 | 生 | 630mg |
モロヘイヤ | 生 | 530mg |
小松菜 | 生 | 500mg |
ブロッコリー | 生 | 460mg |
西洋かぼちゃ | 生 | 450mg |
切り干し大根やドライトマトは水分が抜けている分、100g当たりのカリウム含有量は非常に多くなっています。

一度に食べる量はそこまで多くありませんが、日々の食事に取り入れることで少しずつ摂取量を増やすことができると考えられますね。
2-2.カリウムを豊富に含む果物類
果物もカリウムの摂取源となります。
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
ドライバナナ | 乾燥 | 1,300mg |
ドライマンゴー | 乾燥 | 1,100mg |
干し柿 | 乾燥 | 670mg |
バナナ | 生 | 360mg |
メロン(露地栽培、青肉/赤肉) | 生 | 350mg |
キウイフルーツ(黄) | 生 | 300mg |
キウイフルーツ(緑) | 生 | 290mg |
さくらんぼ(米国産) | 生 | 260mg |
さくらんぼ(国産) | 生 | 210mg |
パパイア(完熟) | 生 | 210mg |
ドライバナナやドライマンゴー、干し柿など、水分が抜けている加工食品はやはり100g当たりのカリウム含有量が非常に多いといえます。

バナナは生でも果物のなかではカリウム含有量が多く、手軽に食べられるのもうれしいポイントですね。
2-3.カリウムを豊富に含む海藻類
海藻類にもカリウムを豊富に含むものが多くあります。
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
刻み昆布 | – | 8,200mg |
干しひじき | 乾燥 | 6,400mg |
真昆布 | 素干し | 6,100mg |
利尻昆布 | 素干し | 5,300mg |
乾燥わかめ | 素干し | 5,200mg |
あおさ | 素干し | 3,200mg |
焼きのり | – | 2,400mg |
わかめ | 生 | 730mg |
カットわかめ | 乾燥 | 430mg |
乾燥わかめ | 水戻し | 260mg |
乾燥させ水分が抜けた状態の海藻類は非常に多くのカリウムを含んでいます。
ただし海藻類にはナトリウムを比較的多く含むものも少なくないため、味付けや摂取量には注意する必要があります。

3.カリウムの不足や過剰摂取による影響
カリウムが不足したり過剰摂取したりしてしまった際、体にどんな影響があるのかも知っておきたいですよね。
ここからはカリウムの不足や過剰摂取による影響について詳しく解説していきます。
3-1.カリウムの不足による影響
血液中のカリウム濃度が非常に低くなった状態のことを「低カリウム血症」といいます。
カリウム濃度の低下によって筋力が低下したり、筋肉が痙攣や麻痺を起こしたりするほか、不整脈が起こることもあります。
ただしカリウムはさまざまな食品に含まれているため、通常の食生活で健康に悪影響が及ぶほど不足することはないと考えられています。
3-2.カリウムの過剰摂取による影響
カリウムは多くの食品に含まれていますが、腎機能が正常な方が一般的な食生活を送っているかぎりは過剰摂取によって悪影響が生じるリスクは少ないと考えられています。
ただしサプリメントなどを過剰に摂取し過ぎることは避けるようにしましょう。
また腎機能が低下している方はカリウムの排泄が低下し血液中のカリウム濃度が高くなる「高カリウム血症」になってしまう場合があります。
高カリウム血症ではときに麻痺や手先のしびれ、筋力の低下などが現れますが、無症状であることも少なくありません。
しかし適切な治療が行われないと致死的な不整脈が現れる場合もあります。
腎機能が低下している方は主治医と相談しながらカリウムの摂取量に注意するようにしてください。
4.カリウムの食事摂取基準と摂取状況
このように疑問に思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
厚生労働省は身体に必要な栄養素を1日当たりどれだけ摂取すべきかの目安として、「日本人の食事摂取基準」というものを定めています。
また「国民健康・栄養調査」で各栄養素の1日当たりの平均摂取量を調査しています。
これから詳しくデータを確認していきましょう。
4-1.カリウムの食事摂取基準
厚生労働省が「日本人の食事摂取基準(2020年版)」で定める食事摂取基準は以下のとおりとなっています。
性別 | 男性 | 女性 | ||
---|---|---|---|---|
年齢 | 目安量 | 目標量 | 目安量 | 目標量 |
18歳以上 | 2,500mg | 3,000mg以上 | 2,000mg | 2,600mg以上 |
ただしWHOのガイドラインではこの食事摂取基準と大きく異なる摂取量が定められています。
WHOは高血圧や心血管疾患、脳卒中、冠動脈心疾患のリスクを減らすため、成人は1日に3,510mg以上のカリウムを食べ物から摂取すべきであると強く推奨しているのです*1。
WHOのガイドラインが定める推奨量も参考にしつつ、カリウムを含む食品を積極的に摂取したいところですね。
4-2.カリウムの摂取状況
厚生労働省が行った「平成30年国民健康・栄養調査」の結果では、1日当たりのカリウムの平均摂取量は以下のとおりです。
年齢 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
20〜29歳 | 2,160mg | 1,830mg |
30〜39歳 | 2,197mg | 2,023mg |
40〜49歳 | 2,163mg | 1,996mg |
50〜59歳 | 2,373mg | 2,260mg |
60〜69歳 | 2,670mg | 2,536mg |
70歳以上 | 2,714mg | 2,473mg |
男女とも全ての年代において平均摂取量が目標量を下回っています。
忙しい生活を送っていてつい野菜や果物、海藻などを食べる機会が減ってしまっている方も多いのではないでしょうか。
特に血圧が高めの方はカリウムを積極的に摂ると良いでしょう。
日本人の高血圧の最大の要因は食塩の摂り過ぎだといわれていますが、カリウムには食塩の主要成分であるナトリウムの排出を促すはたらきがあります。
血圧が高めの方は、食塩の摂りすぎに気を付けながら少しでもカリウムを含む食品を摂るよう心掛けてみてくださいね。
5.まとめ
カリウムは必須ミネラルの一つで、塩分の排出を促すなどの重要な役割を果たす栄養素です。
カリウムは野菜や果物、海藻などの植物性食品に多く含まれています。
日本人の成人の平均摂取量は厚生労働省が定める食事摂取基準の目標量を大きく下回っており、生活習慣病予防の観点から摂取量を増やすべきであると考えられている栄養素の一つであるといえます。
日本人は塩分を摂り過ぎる傾向にあるため、塩分の摂り過ぎからくる高血圧などの生活習慣病を避けるためにもカリウムの摂取が重要です。
カリウムは過剰に摂取しても腎機能が正常な方であれば健康への影響はないと考えられているので、カリウムを豊富に含む食品を積極的に食事に取り入れてみてくださいね。
ただし腎機能が低下している方はカリウムの摂取制限が必要となる場合があるため主治医と相談するようにしてください。