その光景は、まさに壮観であった。毎日巨大なクレーン車が忙しく行き来する光景。これが彼が入社1年目にして任されることになった一大プロジェクトの現場である。通常新入社員は、製造ラインのメンテナンス業務からスタートする。しかし彼は、新製品製造ラインの導入や既存設備の省力化・効率化などの設計、設備の設置から生産開始までの一連の業務を担う役割を任された。たとえば浦和工場で新製品を生産することが決まったとしよう。まずは、必要能力の試算、レイアウト設計、製造設備の選定、設備同士をつなぐ配管や電気配線まで概念図に起こし、数百社に及ぶ施工会社から設計内容に対応できる数社を選定する。価格の妥当性の評価、決裁申請書類の作成を行い、発注までの業務を完了させる。こうして初めて、新製品の生産が本格的に始動する。一つの仕事が完了するまで数か月スパンになるケースが多い。

それにしても今回、彼が担当する案件はかなり大掛かりである。何しろ、歴史あるチョコレートの製造工程を一気に全自動ラインに更新するのだ。総工費は数十億円規模に達する。「日々の生産量は維持しなければならないので、既存のラインは稼働させ続けることが必須条件となります。つまり、生産の合間を縫うようにして設備導入工事の段取りを組み、すべてのレイアウトは既存設備に支障が出ないように設計しなければならない。もちろん、直接の工事や詳細設計は専門業者が手掛ける訳ですが、私が適切な指示を出して初めて正しく動き実現できるのです」。数十億円規模のプロジェクトを動かす指揮官の一員。それが入社1年目の彼に与えられたポジションである。 「初めのうちは質問されたことに対して、ふわふわした回答しかできませんでした。しかし専門業者はその道のプロ。そんな回答しかできない私に“何がしたいのか”と聞かれたことがあります。そこで、計画や時間的なスケジュールや構想をしっかり自分の言葉で話すようにしたんです。すると“1年目にしてはちゃんと自分の考えを持ってるな”と言ってもらえました。嬉しかったですね。」

チョコレート製造ライン導入の「指揮官」という表現は、何ら大袈裟ではない。ひと口に製造ラインといっても、そこで必要とされる機械や資材は実に様々である。生産時のデータから作業者の使いやすさまで考慮した上で、製造機械の仕様を決めなければならないのだ。また、製造設備はいまやどれもがコンピュータによる数値制御だ。ということは、プログラムについてもある程度は理解しておくことが必要。機械・電気だけでなく、情報システム、さらには建築や土木まで。ありとあらゆる技術領域をまんべんなく把握してこそ、製造ライン導入を円滑にリードすることができる。こんな大きなプロジェクトに入社1年目の新人を抜擢してしまうとは、ロッテは何という会社であろうか。「でも、何かトラブルがあれば先輩や上司がすかさずフォローしてくれます。"放ったらかし"ということは絶対にありません。それに、大役を任せてもらえるからこそ、プロジェクトをやり遂げた時に『このラインは自分の手で構築したんだ』という手応えも実感できます。スイッチを押すと、私が頭の中で構想した通りに、巨大な製造ラインが動き出すんです。こんな快感、そうどこでも味わえるものではありません。また、仕事を通じてこれだけ幅広い領域にわたる技術スキルを磨けるチャンスも、他ではなかなか手に入れられないものだと思います」。設計する対象は「工場丸ごと」。スケールの大きな技術者が、ロッテでは続々と誕生し、成長している。

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