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ガムやタブレットの定番のフレーバーといえば、ミントです。そんなミントですが、どんな植物なのか? ペパーミントとスペアミントの違いは? ギリシャ神話に登場するエピソードはご存じですか? 「探検 お菓子の原材料」では今回、ミントの基本情報を紹介していきます。

冥王ハデスと妖精メンテの物語

英語の「Mint」やラテン語の「Mentha」の語源は、ギリシャ語の「menthe(メンテ)」に由来するとされます。これは、ギリシャ神話に出てくる妖精(ニンフ)・メンテの名前からきているようです。ギリシャ神話でミントが取り上げられたエピソードとして、よく知られているのが、冥王(冥府を支配する神)・ハデスと、メンテにまつわる物語です。

メンテの美しさに心を奪われたハデスは、メンテを地上から、地下の世界へ連れていこうとしました。ところが、これに嫉妬したハデスの妻・ペルセポネが、メンテを草に変えてしまった。そしてこの草が、ミントと呼ばれるようになった、というもの。ミントがよい香りを放つのは、メンテが人々に自分の居所を知らせるためだとか。ただし、解釈の仕方によっては諸説あるようで、ペルセポネがハデスからメンテを助けるために、小さな草に変え、茂みに隠した、ともいわれています。

スーッと感じる香りの正体は「メントール」

つづいて、ミントの基本情報を紹介します。

ミントはシソ科の植物で、毎年花を咲かせる「多年草」です(一部、一年しか花を咲かせない「一年草」の品種もあります)。原種は20~40種ほど。繁殖力、交配力が強いことから変種が多いため、すべてあわせると600種を超える品種があるともいわれています。

なかでも代表的な品種が、ペパーミント、スペアミントです。

ペパーミントは、スペアミントとウォーターミントの自然交配で生まれた品種です。香りはスーッと感じる、強い清涼感があります。この香りの元となっている成分、l-メントール(メントール)を多く含んでいるためです。メントールは、ガムをはじめとする食品のフレーバーでもおなじみの身近な存在といえるでしょう。

ミントの品種は、大きく分けると、ペパーミント系(上)とスペアミント系(下)がある

一方のスペアミントは、花や葉先の形を槍(やり=spear<スペア>)に見立てて、この名がつきました。スペアミントは、ペパーミントに比べ、香りも味もおだやかです。欧米では料理を彩るハーブとして親しまれています。スペアミントの甘くさわやかな香りの元は、l-カルボン(カルボン)という成分によるもの。ちなみに、スペアミントにはメントールは含まれていません。

ペパーミントとスペアミントは、食用や飲用のほか、葉から抽出した精油(エッセンシャルオイル)を食品や歯磨き粉、化粧品などの香料として利用しています。主な産地はアメリカです。ペパーミントは栽培地の気候などによって、スペアミントは栽培種によって、微妙に香りが異なるといった特徴があります。

参考記事:どう違う? ペパーミントとスペアミント

このほか、メントール含有量の多い品種として、和種ハッカがあります。分類としては、ペパーミントの仲間です。和種ハッカから抽出するメントールは、主に香料として利用されてきました。

日本では江戸時代から、和種ハッカの栽培が行われていました。その後、明治期から第二次世界大戦前にかけて日本は、和種ハッカから抽出する天然メントールの最大の輸出国だった時期もあります。現在では、インドでの生産量が多く、最大の供給国となっています。

の こだわり

「初摘みミント」

ロッテでは例年、ペパーミント、スペアミントの生産地を、研究員自ら視察しています(昨年は新型コロナウイルスの影響で足を運べませんでした)。

生命力が強いミントは、年に2~3回の収穫が可能です。ところが、同じ場所で長く育てていると、次第に生育が悪くなる「連作障害」が起きやすい植物でもあります。

きちんと管理しなければ、ミントの品質低下や収穫量の減少につながるため、品質維持の観点で定期的な視察は欠かせません。現地生産者の皆さんとコミュニケーションをとって、信頼関係を築くことも大事にしています。こうして、良質なミント(ミントオイル)を安定的に調達しているのです。

その年初めて花が咲く前に刈り取ったミント葉のことは、「初摘みミント」と呼ばれています。初摘みミントは雑味がなく、フレッシュでバランスの良い香りが特徴。ロッテでは、この初摘みミントを「グリーンガム」で使用しています(※ミントオイル中)。中央研究所・海老原京太は、次のように説明します。

「香料の原材料となるミントは通常、春先に芽が出て、7~8月になると紫色の花を咲かせます。葉の成長とともにメントール成分は増える一方で、開花後はメントフランと呼ばれる雑味の元となる成分が増えていきます。また、収穫を繰り返すと、ミントの香りは次第に薄れてしまいます。これとは別に『グリーンガム』には、ペパーミントらしいナチュラルな香りを楽しんでほしい、というねらいがあります。そこで、フレッシュな香りのよい初摘みミントにこだわって、使用しているわけです」

原材料へのこだわりによって、ロッテのミントガムやタブレットは安定した品質、味わいを保ち続けています。

(参考文献)
● 書籍「ミントのチカラ」NHK出版 編
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