子どもの「お口ぽかん」対策には、楽しく続けられる口遊びが効果的!?
子どもの「お口ぽかん」対策には、楽しく続けられる口遊びが効果的!?

最近、口唇閉鎖不全症(こうしんへいさふぜんしょう)の患者さんが増えています。特に、子どもの口が開きっぱなしになる「お口ぽかん」の状態は、口唇閉鎖不全症の可能性があります。ロッテが2022年に実施した、3〜12歳の子どもを持つ親215人を対象にした「お口ぽかん」に関する意識調査※1では、70.2%の親が『「お口ぽかん」は口唇閉鎖不全症の可能性がある』ということを知りませんでした。一方で「お口ぽかん」のリスクを知ると、67.9%の親が、子どものために予防・対策に取り組みたいと考えていることがわかりました。 口呼吸問題の第一人者である今井一彰先生に、子どもの口唇閉鎖不全症の原因と予防・対策についてお話を伺いました。

※1 「お口ぽかん」に関する意識調査 2022年1月21日(金)~1月24日(月)実施

口唇閉鎖不全症、いわゆる「お口ぽかん」とは、どのような症状なのでしょうか?

口唇閉鎖不全症とは、安静時に本来閉じているべき口が開いたままになっていることにより、身体のさまざまな不調を引き起こす疾患のことです。子どもから成人、高齢者まで全世代に起こりうる疾患ですが、幼少期と高年期の患者さんの場合、さまざまな問題を内包しています。 幼少期の患者さんの場合は、歯並びが悪くなる・口腔内の衛生環境が悪くなる・鼻呼吸できないなど、食べる・話す・呼吸する面で問題が起こります。高年期の患者さんの場合は、口腔内の衛生環境が悪くなることによる歯周病や、命に関わる誤嚥性肺炎を引き起こす可能性があります。このように、口唇閉鎖不全症は全身に悪影響を及ぼします。 新潟大学他の研究グループ※2が、日本で初めて口唇閉鎖不全症に関する疫学調査を行い、その結果を2021年に発表しました。それによると、子ども達の30.7%が日常的な「お口ぽかん」を示しており、その有病率は年齢と共に増加していることがわかりました。

※新潟大学「子どもの“お口ぽかん”の有病率を明らかにー全国疫学調査からみえた現代の新たな疾病ー」  新潟大学⼤学院医⻭学総合研究科小児歯科学分野の齊藤一誠准教授らを中心とした研究グループ  https://www.niigata-u.ac.jp/news/2021/83290/

「お口ぽかん」は、なぜ起こるのでしょうか?

お口ぽかん」は、舌や口周りの筋肉の弱さが一番の原因です。子どもの場合は、口を閉じるための舌筋や口輪筋がしっかり成長しないと口を閉じられなくなります。また上顎が狭く、鼻が発達しないことで、鼻呼吸が難しくなり、もっと酸素を吸うためにぽかんと口を開けてしまうことも原因の一つとなります。 子どもの舌や口周りの筋肉が弱くなっている理由としては、「全体にやわらかい食事を好む・食べものをよく噛まずに水などで流し込んでしまう」といった新型の偏食により、噛む回数が減っていることが考えられます。 また、口笛を吹く・風車を回す・シャボン玉や風船を膨らます、これら子どもの口遊びが少なくなっていることも、筋力の低下につながっています。

「お口ぽかん」を対策するためには、どういうトレーニングがよいのでしょうか?

子どもの「お口ぽかん」対策のためには舌や口周りの筋肉を鍛えることが重要です。食事で噛み応えのあるものを食べたり噛む回数を増やしたりすることは舌や口周りの筋肉のトレーニングとなると考えられます。舌や口周りには、舌筋が7種類、表情筋が数10種類あります。普段からさまざまな筋肉を、さまざまな動かし方で使って育てていくことが、「お口ぽかん」の対策につながります。 たとえば私が推奨しているのは、口呼吸を鼻呼吸に改善するために口と舌を大きく動かす「あいうべ体操」です。他にも、笛のおもちゃ「吹き戻し」、風船や風車などの口遊びを増やしてあげてください。お口のトレーニング方法の一つとして、フーセンガムを膨らませるのも、とてもよいと思います。ガムをよく噛み、舌で伸ばし、舌を入れて、息を吹き込んで膨らますという一連の動作が、舌や口周りの筋肉を鍛えるために役立ちます。 成長過程にある子どもの「お口ぽかん」は、早い段階で気づいて、トレーニングすることで修復できます。しかし子どもに口のトレーニングだと思ってやらせると続きません。いかに楽しく遊びとして落とし込んで続けさせるかが重要です。

あなたはフーセンガムを膨らませられますか?

20歳以上の男女1,190人を対象にした別の調査※3では、若い世代ほどフーセンガムを膨らませられないことがわかりました。「フーセンガムをいつでも膨らませられる」と回答した人の割合は、60代以上が最も高く75.2%、20代が最も低く43.8%でした。 また、フーセンガムを膨らませられない親を持つ子どものうち、「フーセンガムをいつでも膨らませられる」と回答した割合は7.5%で、膨らませられる親を持つ子どもに比べると約15%少ないことが明らかになりました。子どもの「お口ぽかん」対策には、舌や口周りの筋肉を鍛えることが効果的です。ロッテの動画コンテンツには、フーセンガムの膨らませ方をわかりやすい動画で紹介したものがあります。下記よりご覧ください。

※3 フーセンガムに関する実態調査 2022年1月14日(金)~1月17日(月)実施

今井 一彰(いまい・かずあき)先生

メディカルエンターテイナー
みらいクリニック 院長
内科医・東洋医学会漢方専門医・NPO法人日本病巣疾患研究会副理事長
(2023年7月現在)

1970年鹿児島県生まれ。山口大学医学部卒業。息育、口呼吸問題の第一人者として全国を講演で回り、一般向けから専門家向け、幼稚園小学校から行政・企業向けなど幅広いジャンルの講演を行う。著書に『免疫を高めて病気を治す口の体操「あいうべ」』(マキノ出版)、『正しく「鼻呼吸」すれば病気にならない』(河出書房新社)など。