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その
05

カリン大百科

インフルエンザウイルスに
効果があるってほんと?

――寒い時期に流行するインフルエンザ。インフルエンザはインフルエンザウイルスの感染によって引き起こされる感染症です。実は、細胞を用いた研究で、ポリフェノールを含むカリン抽出物のインフルエンザウイルスに対する効果が報告されているとのこと。そんなインフルエンザウイルスにカリン抽出物がどのような効果があるのか、ロッテ中央研究所の黒田玲子さんにお話しを伺いました。

培養した細胞を用いた実験でカリン抽出物には、インフルエンザウイルスの感染抑制効果があることが明らかになっています。その効果は大きく分けて2つ。1つ目はインフルエンザウィルスが細胞に吸着するのを阻害する作用、2つ目は細胞に吸着し感染した際に、ウイルスを増殖させるのを防ぐ作用です。

一般的にインフルエンザウイルスは鼻やのどの上皮細胞に吸着、感染し、ウイルスを増殖させます。ウイルスは増殖を繰り返し、約1〜3日の潜伏期間を経て、発熱、頭痛、関節痛、倦怠感、咳、鼻汁といった症状を引き起こす、というのがインフルエンザ発症までの主な流れ。培養した細胞を用いた実験において、カリン抽出物はインフルエンザウイルスそのものに吸着し、上皮細胞への感染を物理的に防ぐ働きがあると同時に、ウイルスの増殖も抑制します。

インフルエンザウイルスに対する効果が確認されたカリン抽出物の成分を調べたところ、ポリフェノールが多く含まれていることが明らかに。緑茶で知られるカテキンも代表的なポリフェノールですが、カテキンの平均分子量は約300に対し、カリンのポリフェノールの平均分子量は5000~6000以上と、同じポリフェノール類でも比較的大きな分子量であることがわかっています。

<豆知識>ウイルスと細菌はどう違うの?

細菌は単細胞の生物であり、栄養を得て細胞分裂を繰り返し増殖します。一方、多くのウイルスは細菌の1/1000~1/100の大きさで、自力で増殖することができません。ほかの生物の細胞内に侵入して、その機能を利用することによって増殖します。

教えてくれた人

教えてくれた人

黒田玲子さん

ロッテ中央研究所研究戦略部感性研究課 チーフスペシャリスト
2002年ロッテに入社。中央研究所基礎研究部に在籍し、機能性食品の研究に従事する。2018年より中央研究所研究戦略部感性研究課で、官能評価を通じた製品特性の可視化に携わる。農学博士。

カリンへの愛

よくよく街を眺めると、カリンの木は思いのほかたくさん植えられていることに気付きます。日本人にとって身近なカリンの効果を、幅広く伝えていけたら嬉しいです。

参考文献:Sawai-Kuroda R., Kikuchi S., Shimizu Y., Sasaki Y., Kuroda K., Tanaka T., Yamamoto T., Sakurai K., Shimizu K., :A polyphenol-rich extract from Chaenomeles sinensis (Chinese quince) inhibits influenza A virus infection by preventing primary transcription in vitro, Journal of Ethnopharmacology 2013,146(3):866-72

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