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FileNo.001 ちふれHD ジャパン・オーガニック
国産オーガニックコスメブランド「do organic」イメージ

新コーナー「ロッテと学ぼうSDGs」では、さまざまな企業・団体の「SDGs」、持続可能な開発目標への取り組みを紹介します。いまや世界中に取り組みが広がっているSDGs活動。掲げられている「17の目標」の達成に向け、企業・団体がいろいろなやり方でアプローチしています。広がりを見せるSDGsの取り組みを、取材を通じてこれからの行動に生かしていくのがねらいです。

第1回は、総合化粧品メーカーのちふれホールディングスの傘下で、環境にやさしいオーガニック化粧品の開発・製造・販売に取り組むジャパン・オーガニックの取締役で宣伝広告部上席部長の本田晃久さんと、ちふれホールディングス 社長室副部長(SDGs担当)の石村晃太郎さんに聞きました。

美容と健康を「一本」でつなぐオーガニック化粧品

ジャパン・オーガニックの化粧品は厳格な基準をクリアしている(写真は、ジャパン・オーガニック取締役の本田晃久さん)

―― オーガニック化粧品の開発を始めた経緯を教えていただけますか。

本田晃久さん 「ちふれ化粧品に勤務し、路面店舗を運営していたとき、新規事業を立ち上げるので商品企画として加わってほしいという指令を受けたのがきっかけです。2007年のことで、ちふれ化粧品の売り上げが100億円を超えたタイミングでした。

ちふれの歴史を振り返ると、斬新な取り組みを早くから行っているんですね。まず全成分表示です。FDA(アメリカ食品医薬品局)が全成分表示を義務化した1975年よりも7年前の1968年に始めています。1974年には日本で初めてスキンケアで詰め替えタイプの化粧品をつくり、89年にはノンフロンタイプのヘアスプレーを売り出しました。

こうした取り組みをさらに進める方法を考えていたとき、ヨーロッパのオーガニック化粧品との出会いがありました。欧米諸国にはいくつかのオーガニック認証があり、たとえば世界的なオーガニック認証組織である『ECOCERT(エコサート)』が設定する厳しい基準をクリアしている化粧品もヨーロッパには少なくありませんでした。これらの認証では、天然原料を作る畑の土壌から、製造工程、パッケージに至るまですべての工程において厳格なルールを定めていると知りました。

こうなると開発に相当な時間とコストがかかりますし、しかもエコサートは環境基準ですから商品が環境に優しいのであって、肌に良いという基準ではありません。そういう商品を消費者が選んでくれるのかどうか――についても疑問がありました。

ただ、既存の多くの化粧品は端的にいえば、水と石油由来成分によってできていて、肌に悪い影響はないけれど、環境には負荷をかけている。ならば、環境に負荷のかからない方法で化粧品をつくることで生物多様性を阻害せず、持続可能な地球のために貢献するべきではないかと考えたのです。環境が良くなれば、人々の健康にも良い影響を与えられます。また健康は美しさの原点ですから、オーガニック化粧品によって、美容と健康を一本でつなげることができると考えたのです。

当時、ヨーロッパレベルのオーガニック化粧品を手がける日本の化粧品メーカーはありませんでした。険しい道かもしれませんが、そこにチャレンジする価値はある。それこそがお客さまの感動となり、化粧品メーカーとしての矜恃(きょうじ)だと考え、『ジャパン・オーガニック』という会社をスタートさせました」

肌トラブル防止のため、何度も実験を繰り返した

環境と美容を両立することで社会に貢献していく(写真左がちふれHDの石村晃太郎さん。右がジャパン・オーガニックの本田晃久さん)

―― オーガニック化粧品をゼロベースからつくるのは難しかったのではないでしょうか。

本田さん 「苦労の連続でしたね。ヨーロッパとは事情が異なり、日本ではいくら環境に良い商品であろうと、使い心地が良くなければ使い続けてもらえない、ということです。

一例をあげると、洗顔に使うウォッシングムース。オーガニック認証『ECOCERT』では石油系界面活性剤を使えないので、当初の商品では10秒で泡が消えてしまいました。ハチミツを使用することで解決するのですが、それが見つかるまでに4年近くかかりました。シャボン玉に糖を入れると膜を張る。あの原理です。1時間ぐらい泡は持ちますし、ハチミツによる肌の保湿効果もありました。ある美容誌の商品テストで、『泡のこし』のテストにおいて、ケミカル系化粧品を超えた結果が出たことから、『ケミ超えオーガニック』と呼ばれるようになりました。

長い間、オーガニック化粧品の課題は満足感を上げることでした。私たちには化粧品メーカーとしてのプライドがあります。努力した結果、石油系原料でつくられた一般の化粧品と比べても良い商品をつくれるようになったのです。オーガニック処方でも心地よく使用できるような商品が増えれば、買いたい人も増えてくる。すると『エシカル(地球環境や人、社会に対して配慮された)コスメ』という選択肢が加わり、ひいてはSDGsにも貢献できるのではないかと考えています。

エコサート/コスモス(2017年1月以降)の基準では、天然由来成分95%以上(コスモス規格は98%以上)、かつ植物原料中95%以上がオーガニック成分であるといったことが求められます。原料は手探りでベストマッチするものを探してきましたが、試行錯誤の結果、兵庫県丹波篠山の合鴨農法で栽培された有機玄米や、川北黒大豆といった国産原料を配合すると良いことがわかってきました。それ以外にもたくさんの天然成分を配合しています。そうしてつくられたスキンケアブランドが『do organic』です。

ただ、天然原料を多く使えばいいというわけではありません。ハーブなどは刺激が強く肌のトラブルが生じることがあるため、人の肌で実際に使ってテストする連続使用試験も行い、気になることがあったら発売を延期して成分を再考するケースがあります。

ここへきて、化粧品に含まれる化学物質を規制する動きがでています。ハワイが、オキシベンゼンという紫外線吸収剤を使った日焼け止めの販売を禁止したのです。生態系に良くないという判断です。私たちは以前から日焼け止めの開発に取り組んでいましたが、最初は効果が上がらなかったり、肌になじまず白く残ったりしました。しかし、99.7%天然由来かつ、海洋生態系に懸念のある紫外線吸収剤、マイクロプラスチックフリーとしながら、SPF50+、PA+++を実現しました。これは『do organic』の姉妹ブランドでナチュラルコスメブランドである『do natural』の商品として販売していますが、『do natural』は天然由来成分を90%以上(水を含む)配合することなどを指針にしています」

SDGsはちふれの「背骨」 環境と美容の両立目指す

ちふれは温室効果ガスの削減に、SDGsが国連で採択される前から取り組んできた(写真は、ちふれホールディングス 社長室副部長SDGs担当の石村晃太郎さん)

―― ちふれグループは、持続可能な社会を実現するための約束「SDGsコミットメント」を表明しています。どんな活動をしているのでしょうか?

石村晃太郎さん 「ちふれホールディングスの代表取締役社長、片岡方和(かたおか・まさかず)はSDGsを重視しており、昨年、2021年にSDGs推進委員会を設立しました。社長自ら委員長になり、全グループ会社から組織横断的に19人の推進委員を選んでさまざまな取り組みをしています。

その一つが、温室効果ガスの削減への取り組みです。スコープ(ちふれが目指すべき範囲)1は、事業者自らが製造段階で使う化石燃料から排出される温室効果ガスの量を測るものです。スコープ2は、他社から供給された、例えば電力や熱、蒸気をどれぐらい使っているかという間接排出量。これらはSDGsが国連で採択される2015年以前から私たちは取り組んできたので、他社と比べても、比較的低く抑えられています。

今後はスコープ3。つまりスコープ1、2に含まれない、資材の調達・運搬、工場から小売店への商品運搬、容器を捨てる際などのCO₂排出に関しても改善を図り、カーボンニュートラルを実現していきたいと考えています。

さらにカーボンフットプリントにも積極的に取り組んでいきます。製品1点あたりで、原料を採掘するところから容器を廃棄するまでに、どの段階でどれくらいCO₂を排出しているかを把握し、どういう対策ができるかを検証していきます」

―― ジャパン・オーガニックのこれからについてお話しください。

本田さん 「オーガニック化粧品の製造ノウハウを、ちふれブランドに活用していくことはあるでしょうね。また、天然原料の改良、開発は日々続けていますので、それによってすでに発売しているオーガニック化粧品を改良しています。

ちふれグループにはSDGsという『背骨』が通っています。環境と美容を両立させながら、みなさんに役立つ化粧品を出すことで社会貢献をしていきたいと考えています」

12 つくる責任 つかう責任
13 気候変動に具体的な対策を
15 陸の豊かさも守ろう
ちふれホールディングス
1947年、化粧品の製造・販売会社のアゼリア薬品工業株式会社を設立。62年、現在の「ちふれ」の源流となる高品質と適正価格を両立した化粧品の製造・販売を開始。68年、全国地域婦人団体連絡協議会(全地婦連)と提携し、「ちふれ化粧品」を発売。3つの方針、「適正な価格」「安全性を重視した製品づくり」「成分・分量の公開」を定める。81年、業界に先駆けて、フロンガスを使わないスプレーポンプを容器に採用。2007年、ジャパン・オーガニック株式会社を設立。08年、国産オーガニック・スキンケアブランド「do organic」を発売。19年、ナチュラルコスメブランドの「do natural」を発売。

取材・文 西所正道

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