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中森俊介投手

2020年、千葉ロッテマリーンズにドラフト2位で指名された中森俊介投手。22年シーズンはケガに苦しみ、それでも4月までに登板した二軍の6試合で150kmを超えるストレートと多彩な変化球を武器に防御率0.90、奪三振15と、そのポテンシャルの高さをうかがわせる投球を披露していました。そして、23年シーズン開幕を目前に控えた今、一軍での登板、活躍を期待する声が球団内外から高まっています。そんな注目株の中森投手にキャリアを振り返ってもらうとともに、野球に懸ける思いを明かしてもらいました。

高校卒業したらプロという思いをずっと持っていた

——野球を始めたきっかけは?

一番大きな理由は、兄がすでに野球をやっていたからですね。その影響で小学校2年生のときに自分も地元の軟式野球チームに入りました。

——中森投手は兵庫・丹波篠山のご出身。当時のひいきのプロ野球の球団はやっぱり……。

いえ、母がそうだったこともあって、巨人ファンでした(笑)。そして僕が野球を見始めたころのエースが上原浩治さんだったので、自分にとっては上原さんが当時も今もスターなんです。

——上原さんのファンだったということは、軟式野球のチームに入ったときからピッチャーだったんですか?

小学5年生のころまではいろんなポジションを守りながら、ピッチャーもやるという感じで。6年生のとき、チームのエースが肩を痛めてしまったのをきっかけに、ピッチャーをやるようになりました。

——プロフィールによると、その後中学校では軟式野球部でプレーする一方で、3年生のときにはボーイズリーグの地元チームに入って硬式野球も始めていたんですよね?

野球の強い高校に進学して、高校を卒業したらプロになりたいという思いをずっと持っていたので、硬式球に慣れたかったんです。それで中3の夏、軟式野球部の大会が全部終わったあと、ボーイズリーグに入りました。

——高校は明石市立明石商業高校で、1年生の夏に甲子園大会(第100回全国高等学校野球選手権記念大会)に出場して、2年生のときには春のセンバツ(第91回選抜高等学校野球大会)と夏の大会(第101回全国高等学校野球選手権大会)でベスト4に進出しています。

はい。

——ただ、明石商業野球部はいわゆる古豪ではない。新興チームでしたよね?

そうですね。自分が入学するまでに1、2回甲子園に出たかな? という感じでした。ただ、練習はすごくキツくて。強豪校はどこもそうだとは思うんですけど、そういう厳しい練習をすることで、試合で劣勢の場面……たとえ負けていたとしても、最後まで逆転を狙う粘り強さを身に付けることができたのかな、という気はしています。あと、すでに大学や社会人、それからプロで活躍なさっていた先輩方がいたのも励みになりました。たとえば今、西武にいらっしゃる松本航さんは自分が入学する前に、すでに日体大のエースで、大学の日本代表にも選ばれていて。入学前に野球部を見学しに行ったとき、たまたま航さんが練習を見にきていて、あいさつをさせてもらえたんですけど、そのときの “本物の選手になった先輩に会った”という経験から、ここで野球をやれば技術向上できるはずだ、という自信というか確信が持てました。

——そして2020年、ドラフト2位指名でマリーンズに入団する……つまり小学生のころからの夢がかなうことになります。子どものころの夢ってなかなか実現しない気がするんですけど、中森投手はなぜできたんだと思いますか?

運がよかったっていうのもあると思うんですけど、やっぱり育った環境が一番大きく影響した気がします。

——環境?

やりたいことをやらせてくれた両親や、いつもキャッチボールに付き合ってくれた兄もそうですが、家族と周囲のみんなが、やりたいことに向かっていく自分を支えてくれている。だからプロになれたんだと感謝しています。もし野球以外の道を目指していたとしても同じだったと思います。

とにかく一軍での経験を積みたい!

——プロ入りからこの2年、中森投手自身の練習や試合への取り組み方を見ても、マリーンズ首脳陣の指導法・育成法を見ても、“プロのピッチャー・中森俊介”をじっくり作り上げてきた印象があります。そして今シーズン、ついに本格始動。ファンやマスコミからも一軍での起用を期待する声が高まっています。

昨シーズンはケガで棒に振ってしまったので、去年のシーズンオフから今年2月のキャンプにかけてはケガなくシーズンを投げ通せる体づくりを進めてきたつもりです。まだまだプロの世界での登板数が少ないので、今はとにかく一軍に上がって投げられるだけ投げて経験を積むのが目標ですね。

——ただ、今のマリーンズ投手陣ってかなりの激戦区ですよね? 石川歩選手や佐々木朗希選手、美馬学選手や益田直也選手といった現在活躍している方々に加えて、去年は怪我ケガで二軍にいた種市篤暉選手も一軍に上がるだろうし、さらにメジャーリーグから澤村拓一選手が帰ってきました。

そうですね、それにはケガなくもっと経験を積んで、どんどん自分をアピールする場をつくらないと、チーム内の競争に負けてしまいます。まずはそこで良い成績を残して、そして千葉ロッテマリーンズの一員として試合に勝ちに行きたいな、と今は考えています。

——その目標を実現するためにストーブリーグのあいだは具体的にどんなトレーニングを?

ムリをしないことを心がけました。これまでオーバーワーク気味だったというか、自分の身体と相談しながら練習を進めるということができていなかったと思うんです。実際、昨シーズンはトレーニング中のケガでほとんど投げられていないですし。今年2月の石垣島キャンプのときには小野晋吾コーチ(一軍投手コーチ)に毎日「ケガしてないか?」って聞かれながら(笑)、シーズン通して投げられるコンディションを作っていました。

シーズンを投げ抜く体づくりをする

——キャンプは一軍と一緒だったんですか?

今年のキャンプから一軍、二軍関係なく全体で練習をする方針に変わっていて。そのおかげで石川さんのような先輩ピッチャーの方々の練習風景を見学させてもらったり、質問をさせてもらえたり、自分にとって刺激となる貴重な時間を過ごすことができました。

——だからこそ小野コーチに毎日ケガを心配される、と(笑)。ところで中森投手が目標としているピッチャーはいますか?

朗希さんみたいな速い球も投げたいし、松坂大輔さんみたいな剛腕にもあこがれるし、挙げればキリがないんですが、あまり目標や夢に向かっていくというのは好きじゃなくて……。

——遠くに目標を据えるのではなく?

そうですね。目の前の課題を解決していって、トレーニングを積み重ねていくのが大切かと。この2年間、一軍で投げていないし、二軍でもあまり投げられていないだけに大きな目標を立てるよりも、一日一日を大切にすることのほうが重要だと思っています。マリーンズファンの方の中には僕のことをもう忘れてしまっている人も多いかも知れないけど、だからこそ今年はみなさんの前でシーズンを通して投げ抜いてチームのリーグ優勝や日本一に貢献できるようにがんばりたいです。

——ちなみに、今おっしゃっていた「一日一日」のうちオフの日ってなにをしていますか?

基本的に家でゆっくりしているというか、ビックリするくらい外に出ないので(笑)。出るとしても体のケアや治療のためだけ。で、その足でごはんを食べたら、まっすぐ家に帰ってきて、のんびりする、みたいな過ごしかたをしています。

——お家では何を?

そのときの気分次第ですね。ゲームをやるときもあるし、映画やドラマを見るときもあるんだけど、熱しやすくて冷めやすくて。ゲームは一気にクリアしようとするし、ドラマは全話一気に見ようとするんだけど、それが終わったら、当分ゲームやドラマはいいかなってなっちゃうんです。

——ちなみにそのオフの日や、試合の前後にロッテのお菓子を食べたりは?

オフの日や試合や練習が終わったあとによく食べています。

——好きなロッテのお菓子はありますか?

全部好きなんですけど、雪見だいふくかな。ガムもよく噛むし、ロッテのお菓子にあふれた日常を送っています(笑)。

——最近うれしかったことは?

野球を始めたときからあこがれの松坂さんが石垣島キャンプに来られて。少しの時間だったんですけど、お話させていただきました。最近一番うれしかったことです! いつか上原さんにもお目にかかれるとうれしいです。

取材・文 成松 哲

中森俊介(なかもり・しゅんすけ)
中森俊介(なかもり・しゅんすけ)
2002年5月29日生まれ、兵庫県丹波篠山市出身の20歳。小学校2年生から多紀野球少年団で野球を始める。篠山東中では軟式野球部に所属。3年生の夏から三田ボーイズで硬式野球を始める。その後、進学した明石商業では1年生の春からベンチ入りし同年秋からエースとして活躍。1年生の夏から連続で甲子園出場。2年生の春と夏は連続で4強入りを果たす。20年ドラフト会議で千葉ロッテマリーンズから2位指名を受け入団。右投げ左打ち。背番号56。
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