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山口航輝選手

ロッテの若きスラッガー、山口航輝選手。2021年シーズンの開幕戦、20歳にして、5番・指名打者でスターティングメンバーに大抜擢されると、シーズン中に積み重ねたホームランは9本と、今季のマリーンズの「大砲」を予感させる急成長! さらなる大ブレークを予感させています。豪快なバッティングが魅力のマリーンズ注目株に、野球にかける思いをうかがいました。

周囲のサポートで故障を乗り越えた高校時代

——はじめて野球に触れたきっかけはなんでしたか?

父親と公園でキャッチボールをしたのが3歳頃でしたね。この時、家には野球ボールとサッカーボールがあったらしいんですが、自分が野球ボールを選んでキャッチボールをしたと聞かされています。小学校1年生になって、少年野球チームに入りました。本格的に野球を始めたのはこの頃から。投げたり打ったりするのが、とにかく楽しかったです! 当時はピッチャーをしていて、バッターを抑えるのも好きでした。無邪気に野球を楽しんでいました。

——中学時代はボーイズリーグで活躍し、高校進学では秋田県の明桜高校を選ばれました。山口選手は大阪出身ですから、親元を離れた寮生活は、なかなか大変な経験だったのではないでしょうか。

甲子園を目指したいという強い気持ちと、人との縁に恵まれて、強豪のノースアジア大学明桜高等学校への進学を決めました。親元を離れることには、あまり不安はなかったです。父親は背中を押してくれましたし、母親は心配だったと思いますが、最後は「自分で選んだ道だから」と応援してくれました。入学後は寮生活が始まり、掃除や洗濯はすべて自分でやることに。練習が終わるのはだいたい夜の7時か8時で、その後夕食です。食後10時の消灯までの間に自分で洗濯などの身の回りのこと、ひと通りを終わらせるのが日課でした。親のありがたみがよくわかる3年間でした。

——2年生になると、4番・投手としてチームを鼓舞し、なかでも2年生の夏は秋田県大会で優勝、念願だった夏の甲子園出場も果たしました。ただ、秋田県大会の決勝、試合中のアクシデントで右肩を痛め、甲子園では打者での出場でした。

2年生夏の秋田県大会の決勝は、印象に残っている試合のひとつです。優勝を決めて目標としていた甲子園にも出場することができ、いい経験ができた半面、負傷したことでこの先、野球を続けられるかどうか……不安が生じました。気持ちもかなり落ち込んで。でも、その後、定期的に通院することになると、監督がいつも付き添ってくださったり、月に1回、関東の病院に行く時には、両親も駆けつけてくれたりして本当にありがたかった。そういったサポートに、しっかり恩返ししたいという気持ちがあって、頑張って故障を乗り越えられたのだと思います。

——苦しさを乗り越えた3年生の夏、再び秋田県大会の決勝に駒を進めました。対戦相手は、吉田輝星選手(日本ハムファイターズ)のいた金足農業高校で、その軍配は金足農業に……。

3年生の夏の秋田県大会決勝は、本当に悔しい、悔しかった、のひと言です。夏の甲子園期間中、ほとんどテレビは見ていなかったです。といっても、気持ち的にはもう次のステップ――プロに向いていました。この期間、練習を積み重ねていましたから。

初ホームランは「打った瞬間」わかった会心の一発!

——2018年のドラフト会議で、千葉ロッテマリーンズから4位指名を受け、プロ入りを果たしました。その後はファームで力をつけ、2021年シーズン直前のオープン戦では全試合で4番を任されるなど、アピールする場面が一気に増えました。調子が上がってきた要因は?

2020年秋の『みやざきフェニックス・リーグ』のあたりから、打撃フォームを調整しました。以前は左足を摺り足で打つ構え方でしたが、足を上げてタイミングをとる打ち方に変更。これは、打球を飛ばすためにどうしたらいいかと考えて取り組んだ結果です。それがいいかたちでハマって、結果もしっかり出たんだと思います。ただ、タイミングの取り方が全然違ってくるので、その難しさ、不慣れな感じはしばらくありました。でも、しっかりバットに当たったときの感触、飛び方は、足を上げる今のスタイルのほうが断然いいと思います。

——「打球を飛ばす」……この課題に対して、2021年の春季キャンプ中には元福岡ソフトバンクホークスの松中信彦さんから、下半身を使う指導を受けたそうですね。

そうですね。やっぱりどうしても力が入って、上半身だけで打ってしまうところがありました。指導を受けたあとは、下半身を意識して打つことで、そこにネバりもプラスされるようになり、自分の中ではさらにバッティングの感覚がよくなったと思います。

——そして迎えた2021年シーズンの開幕戦(3月26日の福岡ソフトバンクホークス戦)では5番・指名打者に抜擢されました。スタメン出場はもちろん、1軍公式戦出場が初めてでした。また、4月9日の埼玉西武ライオンズ戦では、待望のプロ初アーチも飛び出しました。

うれしかったですね。これまで1軍経験がないなかでの開幕戦で、やっぱり緊張もありましたけれど、楽しみながら試合に臨めました。ヒットも1本出てよかった。両親からは一番に「おめでとう!」の連絡が入っていました。初ホームランは、打った瞬間に「入った!」とわかる打球でした。初ヒットを打ったあとはなかなか次を打てなくて苦しいなかでのホームランでしたから、余計にうれしかったです!

心技体のうち一番大事なのは「心」。その鍛え方は?

——2021年シーズンを振り返ると、一時ファーム落ちもありましたが、1軍復帰を果たした後半戦での活躍は印象的でした。なかでも、11月7日のクライマックスシリーズ、東北楽天ゴールデンイーグルス戦。同点の6回、一時勝ち越しとなる右翼ポール直撃のソロホームランを放ちました。21歳2カ月でのこの一発は、パ・リーグのクライマックスシリーズでは最年少本塁打記録です。

ファームでは1日でも早く1軍に帰ってやろう! と強い気持ちで取り組んでいました。この時は、(2軍監督の)鳥越(裕介)さんにメンタル面で教わることが多かったです。当時は三振が続いていた時期で、振り返ると「三振したくない」とか「チャンスをつぶしたくない」と打席の中で考えてしまっていました。そういった気持ちの弱さが、結果にもあらわれてしまったのでしょう。よく心技体がスポーツで大切なことと言われますよね。自分はその中で「心」が最も大事な要素だと思っています。心を鍛えるにはどうするか――。それには自分に〝自信″をつけることが重要で、そのためにはやっぱり練習することが一番なんです。しっかり打ち込む、普段より打つ量を多くする、そんなことを心がけていました。ほかにも、(当時は2軍ヘッドコーチ兼打撃コーチ/現在は1軍打撃コーチの)福浦(和也)さんにあらためて打撃力を上げるために必要なポイントを教わり、後半戦は状態がよくなりました。クライマックスシリーズでのホームランも、しびれる展開のなか、いい場面で打てて自信にもなりました。

——山口選手がホームランを打つと、パフォーマンスとして「俳句」を披露していて、マリーンズファンの間でも話題です。球団のTwitterでは「ぐっさん 心の俳句」として、時々ですが、写真付きで公開されることも。それにしても、どうして「俳句」なのですか?

中学校の国語の授業で、お茶メーカー主催の俳句コンテストにクラス全員で応募したんです。そうしたら、なんと自分の俳句が佳作特別賞に選ばれました。そんなきっかけから、ホームランが出ると、パフォーマンス的に披露しているんです。これからもホームランをたくさん打ちたいと思っていますので、俳句も少し頑張ります(笑)。

——そんなエピソードがあったんですね。千葉ロッテマリーンズはチームの雰囲気もよさそうですね。

本当に明るいチームだと思います。ベテラン、中堅、若手が一丸となってチームがひとつにまとまっています。とはいえ、チームには自分と同世代のスゴイ選手がたくさんいます。そこは負けないように! と思っています。

——今シーズンの山口選手の目標は?

目標は大きく、ホームラン30本です! 自分の長所はやはり長打力。これからもこだわってやっていきたいですし、ファンのみなさんにもぜひ見ていただきたいところです。ZOZOマリンスタジアムでの応援はすごいですね! 打席ではチカラになっています。本拠地ZOZOマリンスタジアムでもみなさんの前で、1本でも多くのホームランを打ちたいと思っています。

——ありがとうございます。最後に、山口選手の座右の銘を教えてください。

「夢なき者に成功なし」です。夢や目標を持ってそこに向かっていかなければ、何事も達成できないと思うんです。それに、夢や思いがないと、何かを目指すことさえできないかもしれません。昔から好きな、大事にしている言葉です。

山口航輝(やまぐち・こうき)
山口航輝(やまぐち・こうき)
2000年生まれ。大阪府出身。右投げ右打ち。背番号51。小学校1年生で少年野球チームに入り、中学時代はボーイズリーグで活躍。秋田県の明桜高校に進学すると、2年生から4番・投手で活躍し、夏の甲子園出場を決めたものの予選の怪我が影響し出場はならず、チームは敗退。3年夏の県大会では決勝でエースの吉田輝星を擁する金足農業高校に敗れる。2018年ドラフト4位で千葉ロッテマリーンズに入団。3年目の2021年シーズンのキャンプ、オープン戦で頭角をあらわし、開幕戦は5番・指名打者でプロ入り後初のスタメンに。ロッテの好きなお菓子は「雪見だいふく」と「パイの実」。
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