entry category about
CONTENTS CATEGORY ABOUT
ページ1 / 3

お菓子をこよなく愛するアナウンサーの渡辺真理さんが、商品開発や品質管理の担当者から、ブランドストーリーを聞き出し、商品の魅力を余すことなく伝えるこの対談。第3回は、40周年を迎えた今年、パイ生地とチョコレートを一新した「パイの実」を取り上げます。1979年の発売以来、多くの人に愛されている「パイの実」開発秘話を、ブランド戦略担当の河村宏介さんとロッテ中央研究所のチョコ・ビス研究部の早坂亞矢さんに聞きました。

高級菓子だったパイを多くの人に

渡辺真理さん 渡辺
「パイの実」40周年、おめでとうございます。発売から、もう40年経つのですね。私は動物好きなので、リスが描かれたこのパッケージも大好きです。リスに導かれて袋を開けると、まるでリスがため込んだかのようにパイの実がぎっしり入っていて。夢のあるパッケージも、お客様に愛されている理由の一つではないでしょうか。
河村さん 河村
ありがとうございます。お客様からも、箱を開ける前からテンションが上がって、開けた瞬間に幸せな気持ちになるというお声をいただきます。そう言っていただくと、作り手としても、とてもうれしい気持ちになります。
渡辺真理さん
1979年の発売以来、ずっとこのデザインなのですか?
河村さん
はい。リスが1匹増えたり葉っぱのタッチが多少変わったりと、マイナーチェンジはしていますが、この絵本のような森の世界観はずっと守り続けています。
渡辺真理さん
発売当初、子ども心に画期的な商品だと思った記憶があります。
ブランド戦略担当の河村宏介
河村さん
当時は、「パイ=高級菓子の専門店にある焼き菓子」というイメージが強かったと思います。その高級菓子を、広く皆さんに楽しんでほしいという思いからパイの実を発売しました。
そうした思いが、“一口サイズのチョコレートパイ”や“リスが登場する森の世界観”につながった経緯を教えていただけますか?
河村さん
当時の社内デザイナーの子どもの頃のエピソードが関係しています。幼い頃、焼くとパンのような風味のする熱帯植物「パンノキ」を雑誌で知り、“次々とパンができる夢のような木”に憧れていたそうです。試作品を食べたときにそのパンノキを思い出し、パイが木になっているデザインを描き起こした。その描かれた絵から「パイの実」と名付けられました。担当になってから聞いた話なのですが、夢があって大好きなエピソードになりました。
素敵なエピソードですね。きっとデザイナーさんの中に、「木にお菓子がなったらいいなぁ」という子どもの頃の夢が残っていて、試作品を召し上がった瞬間にフッとつながったのでしょうね。
河村さん
瞬時にひらめいたこの発想から40年間も愛され続ける商品になったのは、本当に驚くべきことだと思います。
どの業界のどの商品にも言えることかと思いますけれど、新発売のものが受け入れられて浸透していく大変さもさることながら、長く愛され続けることは、もしかしたらもっと難しいことかもしれません。河村さんが、パイの実の担当になられたのはいつごろですか?
河村さん
1年ほど前になります。パイの実は小さい頃から好きなお菓子で、ロッテの入社面接でも、将来的にパイの実に携わる仕事がしたいと伝えたほど。担当することができて幸せだなと思っています。
小さい頃からお菓子はよく食べていましたか?
河村さん
そうですね。弟がいるのですが、2人でパイの実もよく食べていました。今も家族で集まるときは食べますよ。弟からはダメだしされます、こういうフレーバーを作れとか(笑)。
弟さんも30年来のパイの実のファンでいらっしゃるということは、的確なご意見をお持ちですよね。研究所所属の早坂さんは、いかがでしょう? やはり小さい頃からパイの実がお好きでしたか?
中央研究所の早坂亞矢
早坂さん 早坂
はい。子どもの頃、両親がゴルフの練習に行くときにいつも渡されていたお菓子がパイの実でした。食べられるのがうれしくて、「早くゴルフ行って~」と思ったりしていました(笑)。
早坂さんはいつも研究所にいらっしゃるのですね。具体的にはどんなお仕事なのでしょうか?
早坂さん
試作を重ねながら、今ある商品の味の改良や新しい味を生み出す仕事です。また、工場での円滑な生産に繋げられるようサポートしたりもしています。
白衣を着て作業されているのですよね?ということは、リケジョでいらっしゃる?
早坂さん
はい。リケジョです(笑)。大学では応用生物化学を学びました。
ロングセラー商品を改良していくのは至難かと思います。長く愛されている現行品を改良する場合、気をつけていらっしゃるのはどんな点ですか?
早坂さん
長い間愛されている商品の場合、お客様は「この味が私のパイの実」といったこだわりをお持ちです。ですから、変えて良いところと変えてはいけないところを見極めることが一番重要だと思っています。仮説を立てて試作品を作り、お客様に試食をしてもらって、評価していただいた要素を取り入れるようにしています。
今年はパイ生地もチョコレートも改良されたとか。どんなところが変わったのでしょうか?
早坂さん
まずパイ生地のほうは、“香ばしい香り”を追求しました。パン屋に入るとパンが焼けるいい香りが漂ってくると思うのですが、焼き菓子にも共通する香りがある。それを届けたいと思いました。また、その香ばしいパイとケンカをしないよう、チョコレートもまろやかに仕上げました。パイ生地とチョコレート、トータルで食べておいしく、もう一粒食べたい! と思ってもらえるような品質を目指しました。
なるほど。今は簡潔に説明してくださいましたけれど、実際に仕上がるまでにはかなりの年月がかかっているのですよね?
早坂さん
そうですね。私が担当になる前、歴代の担当者が試作品を繰り返し作っていたのですが、現行品に勝てずに難航していたようです。
きっと、毎回「これならば!」という心持ちで試作品を作ってこられた中で、今回のようにやっと実った時は、どんなご感想を?
早坂さん
「ありがとうございます! 成し遂げました!」でしょうか(笑)。今までの検討経緯と努力の結晶ですので。今はお客様に、やっと「もっと美味しくなったパイの実」を届けられる! という喜びでいっぱいです。
河村さん、今回、モニタリングがうまくいかず改良点を見つけられなかったとしたら、41周年や42周年を機に改良する可能性もあったのでしょうか?
河村さん
はい、無理して変える必要はないので、40周年に合わせるのは断念していたと思います。
タイミングがピタリと合ったということですね。素敵な40周年。本当におめでとうございます!
1
2
3
Shall we Share

ほかの連載もみる