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硬くて苦いカカオ豆が、なめらかで甘いチョコレートへと形を変えるまでには、長い道のりがあります。今回は、カカオ豆からチョコレートを作る工程を、ロッテの「ガーナミルク」を例に紹介します。また、チョコレートづくりのこだわりについて、ロッテ中央研究所チョコレート研究課の課長安村智史と加藤雅樹に聞きました。

まるごと? 砕いてから? チョコの味を左右するロースト方法

ロッテの「ガーナミルク」は発売以来、カカオを豆のまま仕入れ、製品になるまで一貫して自社で行う「Bean to Bar」を続けています。ガーナ共和国や中南米などの産地で選別されたカカオ豆は船で日本に運ばれ、ロッテのチョコレート工場へ到着。そこでさらに基準を満たさない豆や細かいゴミを取り除き、良いカカオ豆だけを厳選します。

カカオ豆を砕き、皮などを取り除くと、「カカオニブ」ができます。「ここで、ていねいに表面の皮を取り除くことがポイント。雑味をとるための手間は惜しみません」と加藤は言います。

次に、カカオ豆は、ロースト(焙炒=ばいしょう)されると、カカオ独特の香りが引き出されます。ここにも、ロッテ独自のこだわりがあります。カカオの香り成分はとても繊細で、ローストの加減によって、チョコレートの風味は大きく変わります。「カカオの個性が出すぎても、なさ過ぎてもダメ。火入れを強くすれば欲しい香りが得られますが、逆にいらない香りが出てしまうことも。カカオの個性に応じて温度や時間を調節し、ベストなバランスをめざします」(加藤)。

ローストすることによって豊かな香りが引き出される

ロースト方法には一般に、豆を砕かず、まるごとローストする「ホールビーンロースト」と、豆を砕き、皮を取り除いたカカオニブをローストする「ニブロースト」があります。「ホールビーンローストは外皮に包まれた状態で焙煎するため、揮発しやすい繊細な香りが保持されやすいですが、不揃いなカカオ豆の大きさが影響して、均質にローストしづらいという特徴があります。一方、ニブローストは前述した繊細な香りはやや飛びやすい方法ですが、大きさのばらつきが少ないので熱を均一に加えやすく、ムラや雑味の少ない綺麗な焙煎ができます。どちらの方法にもそれぞれの利点があり、製造者が求める風味に合わせて選択しています。」と加藤。

「カカオマス」の状態に。磨砕することでペースト状になる

香ばしい香りをまといチョコレートに一歩近づいたカカオは、磨砕の工程へ。カカオニブには脂肪分(ココアバター)が約55%含まれているため、すりつぶすとドロドロのペースト状になります。これが「カカオマス」。料理にたとえれば、ここまででようやく下ごしらえが完了!

より細かく、なめらかに。「ガーナミルク」最大のこだわり

ガーナミルク

ミキサーにカカオマスと砂糖、ココアバター、乳原料などを入れて混ぜ合わせたら、リファイナーへ投入します。中には5つのローラーがあり、カカオマスや乳原料、砂糖などの粒子を40分の1のサイズになるまで徹底的にすりつぶしていきます。「なめらかさはガーナミルクの一番の特長です。そのため、原料の粒子から来る口の中でのザラつきを感じないようものすごく細かくすることにこだわっています」(加藤)。

ガーナミルクの特長「なめらかさ」を出すための工程。原料の微粒化(左)とコンチング(右)

さらになめらかでコクのあるチョコレートに仕上げるのが、コンチング(精練)の工程です。微粒化されたさまざまな原材料に熱を加えながら、時間をかけて練り上げることで水分や雑味を飛ばし、より洗練されたカカオの魅力を引き出します。

続いて、チョコレートの温度を調節するためテンパリングを行います。ショコラティエが大理石の台に溶けたチョコレートを素早く広げたり、まとめたりを繰り返すあの作業。工場では専用の機械を用います。テンパリングで温度を調節しながら段階的に冷ますことで、チョコレートの油脂結晶が均一化し、食べたときの口溶けや表面のツヤが生まれるのです。



最後に型に流し込み、冷やし固めれば、なめらかでおいしい「ガーナミルク」の出来上がり。真っ赤なパッケージに包み、全国各地へ出荷します。

出来上がった「ガーナミルク」

「カカオの産地や育った土壌、発酵方法やロースト条件、ブレンドの割合、コンチングの加減など、さまざまな要素が味に影響するため、可能性が無限にある奥の深い素材です。食べる人の好みも十人十色ですし、追求しだしたらきりがない。そこがおもしろく、やりがいを感じます。永遠のカカオ沼にハマっています」(安村)。

の こだわり

毎朝の品質確認で変わらないおいしさを守る

ロッテの中央研究所

ロッテでは、最高品質のチョコレートづくりをめざして、素材から商品になるまで徹底した品質管理を行っています。カカオの産地の人々と信頼関係を築くのもその一つ。「質の高いカカオを作るメリットをしっかりと伝えてモチベーションアップを図り、そのためのサポートも行っています」と安村は話します。

梱包は箱に詰めるまでをすべて自動化している

チョコレートに加工した後も、厳しい品質チェックが行われる。中央研究所では、毎朝できたてのチョコレートを食べて、味や食感、見た目に違和感がないか確認しています。「官能検査は品質確認を正確に行うための重要な指標になるので、日々、味覚を研ぎ澄ませています。微弱な苦みや酸味も感知できるか定期的にテストも実施されるので、プレッシャーもあります」と加藤。いつも変わらないロッテのチョコレートのおいしさは、こうした研究員たちの努力によって支えられています。

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