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グミの食感を変えたグミ

ガムメーカーのロッテが“噛み応え”にこだわり開発した“超・弾力”食感のグミ「パスティーユ」。ロッテのおいしさの秘密を探る「探検 お菓子の原材料」では、このハード食感グミを取り上げます。従来のグミとはまったく異なる噛み心地は、どうやって作られるのでしょうか。その食感の秘密をお届けします。

ロングドライ製法でグミを引き締めより硬く

グミ人気が高まりを見せるなか、最近はハードタイプのグミがちょっとしたブームに。長引くコロナ禍を背景に、噛むことで気分転換ができると考える人が増えている表れではないでしょうか。

こうしたブームを受けて、ロッテは超・弾力ハード食感グミ「パスティーユ」を発売。噛むことの重要性を訴求し続けてきたロッテが、“噛み応え”に特化して開発した商品です。

パスティーユとはフランス語で「小粒の飴状の菓子」の意味。実は北欧にはキャンディ市場のなかに“パスティーユ”という菓子カテゴリーがあります。

キャンディやタブレット、またガムとも違う食感で親しまれているこの“パスティーユ”にロッテの研究員たちが注目したことが、ハード食感グミ「パスティーユ」開発のきっかけになりました。

「最初は、北欧のパスティーユをそのまま日本で展開することも考えたのですが、食べてみると歯に付きやすく、日本人には不向きでは?、とも感じました。そのころ、日本ではハード食感のグミ人気が高まりを見せていたこともあり、それなら北欧のパスティーユを日本風にアレンジし、これまでにない“ハード食感のグミ”を開発できないかと考えたのです」(ロッテ中央研究所 チューイング研究部 キャンディ研究課 藤本一郎)

「ロッテのグミには、『Fit’s BIG グミ ゴツンとふにゃん。』があり、「ゴツン」はハード食感をうたっていますが、昨今のブームを受け、さらなる硬さを追求しました。本場のパスティーユに感じられるような“噛み応え”を目指すために、配合と製法を一から見直していきました」(ロッテ中央研究所 チューイング研究部 キャンディ研究課 大畠菜摘)

実際に食べてみると、今までのグミにはない硬い食感に驚きます。まさに“噛み応え”あるグミ。噛めば噛むほどじわじわとフレーバーのうまみが口に広がり、口の中で溶けてなくなるまで、ずっとその味わいを楽しむことができます。

それではどうやってこの“硬さ”を生み出しているのでしょうか。従来のグミの製造工程を追いながら、硬さの秘密を探っていきます。

グミは、一般的に砂糖や水飴などの糖類、ゼラチンやアラビアガムなどのゲル化剤、果汁などをミックスさせて“グミベース”(グミの生地)を作り、型に流し込み、乾燥させて固めています。パスティーユが大きく異なるのは、紫色の文字で示した部分。3のゼラチンの量と、5の乾燥させる温度と時間です。

  • 1、仕込み
    まず砂糖や水飴といった糖類とアラビアガムなどのゲル化剤を水に溶かします。
  • 2、濃縮
    上記を煮詰めて濃縮します。
  • 3、混合
    濃縮液にゼラチンや香料、酸味料、果汁などの原料を混合し、グミベースを作ります。
    パスティーユでは通常のグミの倍以上のゼラチンを使用します。
  • 4、デポジット成型
    スターチ(でんぷん)で成型したトレイ(スターチモールド)に充てんします。まずスターチを敷き詰めたトレイに型を押し当てくぼみを作ります。そのくぼみにグミベースを流し込んでいくのです。スターチで作ったトレイは、水分を吸収しやすく、繰り返し使えるというメリットがあります。

  • 5、常温乾燥
    1日以上乾燥させます。
    パスティーユは、長時間、高温で乾燥させます(ロングドライ製法)。これにより水分を飛ばし、グミを引き締めているのです。
  • 6、デモールド
    トレイを反転させてグミを取り出します。
  • 7、表面処理
    表面処理を行い、包装すれば完成です。

「パスティーユの仕込み段階(配合)でゼラチンを倍の量に増やしたのは、より硬い食感を生むため。しかし、ゼラチンを増やすとグミベースの粘度が上がり、型に流し込みづらくなります。そのため、グミベースの濃度を薄くする必要がありました。ところが濃度を薄くしたグミベースを型に流し込むと、従来のように自然乾燥では固まりづらいうえ、ゼラチンを増やしたにもかかわらず理想の硬さに達しません。そこで、通常の倍ぐらいの時間、高温で乾燥させる製法(ロングドライ製法)を導入しました。これにより水分を飛ばし、グミを引き締め、硬い食感に仕上げているのです」(藤本)

噛むほどじわじわ染み出す味わい

噛むほどにフレーバーの味わいがじわじわと染み出してくるのもパスティーユの特徴です。現在、販売しているフレーバーは、定番のグレープとピーチですが、そのほか、レモンとハーブミントの全4種類を展開してきました。

「北欧のパスティーユの場合、フレーバーはハーブミントが定番。リフレッシュしたいときなどにのど飴代わりに使われています。日本でもそうした需要を想定し、テスト販売時には、ミント系とフルーツ系の2本立てでスタートしました。しかし、パスティーユを手に取った方々から、“噛めば噛むほど味が染み出るグミ”とのご評価をいただいたことから、フルーツ系のフレーバーに力を注いできました」(藤本)

フレーバーを決める際も、グミになったときに“噛むほど味が染み出てくる素材” であるかどうかを判断の基準にしています。

グミを食べ比べてみるとわかりますが、柔らかいグミのほうが素材の味は出やすく、食感が硬いほど素材の味が感じにくいはずです。パスティーユはあえてそこに挑戦。噛めば噛むほど味わいが出てくる素材は何かを研究し、選び抜いているのです。

また、原料の配合も考え方は同じ。どうすれば、“噛むほど味が染み出てくるか”に焦点を当て、果汁やそれ以外の素材の配合比率を見極めています。

「定番のグレープは、今年9月に、より果実の味わいを楽しめるように品質のリフレッシュを図りました。最初は果汁だけだったのですが、リニューアル後はピューレを追加。それにより、噛みしめることで出てくる“香味感”を表現できたかと思います。対してピーチは、果汁だけのほうが香りやピーチのフレッシュ感が表現できると考え、ピューレは加えずに45%の果汁を配合しました。また、3月の発売当初に発売したレモンには、“本物感”を味わえるようにレモンピールを加えていました」(大畠)

今後は、ハードグミ特有の、素材の味を出しづらいという点をカバーし、フルーツ系以外のフレーバー展開も視野に入れています。

「一般的に日本のグミは、フルーツ系のグレープが王道。それ以外のフレーバーでは、ソーダやコーラといったドリンク系が売れ筋です。とはいえ、ドリンク系の素材で“噛むほどに増す味わい”を求めるのはハードルが高くなります。それもあり、味が出やすいフルーツ系フレーバーに力を注いできたのですが、今後はこうしたドリンク系はもちろん、素材の範囲を広げて展開できればと思います」(藤本)

この商品、今後の課題は盛りだくさん。言い方を変えれば、多くの可能性を秘めた商品だと自負しています。

例えば、グミの形状。スーパーやコンビニを訪れると、クマやウサギといったどうぶつ型から、グレープやレモンといったフレーバーに合わせたフルーツ型など、ブランドごとに個性豊かなグミが並んでいます。パスティーユは「口収まりのよさ」と乾燥のしやすさを意識し、小さく、片側を平らにした帽子のような形にしました。とはいえ、「噛み応え」をうたった商品であるだけに、大きさも懸案事項。今も試行錯誤を繰り返しています。

「一粒で“たくさん噛める”のが特徴ですから、もっと大きいほうが、少しでも長く噛めていいのでは、という意見もありデータを集めています。また、“ブランドを代表する形を作りたい”という思いもあり、今後はさまざまな意見を参考に進化させていければと思います」(大畠)

噛み応えという点でも進化の可能性は十分に秘めています。今より長く、心地よく噛める食感を追い求め、研究者たちのトライアンドエラーは続きます。グミのようでグミではない――そんな新たなカテゴリーの誕生もあり得るかもしれません。

パスティーユの進化にご注目ください。

の こだわり

ロングドライ製法

長時間高い温度で乾燥させてグミを引き締めることによって、硬さが増すだけでなく、特徴のある食感を実現しました。

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