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サックサクのパイにチョコレートがたっぷり入った「パイの実」。パイとチョコの絶妙なバランスに、口に運ぶ手が止まらない方も多いのではないでしょうか。ロッテのおいしさの秘密を探る「探検 お菓子の原材料」では、2回にわたり、パイの実のふっくらサックサクとしたパイの秘密に迫ります。

パイ生地のおいしさの秘密

パイの実が誕生したのは1979年。当時、パイ菓子と言えば、洋菓子店でしか手に入らない特別な菓子でした。ロッテはそこに注目し、「もっと気軽に食べられるパイ菓子」の商品化を目指したのです。

すると、技術者たちにある出合いが。海外の展示会で生地と油脂を折り込んで重ねる“折りパイ”製造機を見つけたのです。これを工場に導入したことから「パイの中にチョコレートを入れた一口サイズのパイ菓子」を作る製法技術が生まれました。

何より難しかったのは、「折り重ねたパイ生地をふっくら焼き上げること」と「焼き上がった繊細なパイを壊すことなくチョコを注入すること」。

この2つの難題を乗り越えるには、多くの時間を費やしました。

「パイの実」の製造工程

  • ① 小麦粉などの原料を混ぜて生地を作り、十分寝かせる。
  • ② 直前にマーガリンを入れ、生地をローラーでうすく延ばす。
  • ③ うすくなった生地を折りたたみ64層になるまで重ねていく
  • ④ うすく延ばした生地を六角形に型抜きし、表面に4つの穴を開ける。
  • ⑤ 表面に麦芽糖をかける
  • ⑥ 65mの長いオーブンに並べてじっくり焼く。
  • ⑦ 注射器を太くしたような針を使ってチョコを注入する。
  • ⑧ チョコがパイに合う硬さになるまで冷やす。
  • ⑨ 包装して梱包。

では、パイの実はどう作られ、サクッとしたパイ本来のおいしさを生み出しているのでしょうか。

前半では、「折り重ねたパイ生地をふっくら焼き上げる」ためのこだわりをお届けします。

64層をつくる

パイの実のパイ生地は、ローラーで生地を延ばしたあと、機械を使って部分的に折りたたみながら、64層を作り出しています。

「テスト段階でかなりの回数を重ねました。層が少ないと、層と層の間が空きすぎてしまい、サクサクッとした食感が生まれづらい。逆に層が多いと、生地を焼いたあとにチョコを入れる際にうまく注入されません。そうした失敗を繰り返しながら、導き出されたのが64層でした」(ロッテ中央研究所 チョコ・ビス研究部 ビスケット研究課 五十嵐由香子)

六角形が縦方向に膨らませる

“六角形”がトレードマークのパイの実ですが、六角形にはパイ生地をきれいに“縦方向”に浮き上がらせるという重要な役割もありました。

「パイ生地の層を均一に、縦方向に浮き上がらせるには、円形に近い方がいいとされています。とはいえ、パイの実の生地は、薄く延ばしてから型抜きして作るため、円形では無駄な部分が出てしまいます。六角形は、円形に近く、また生地の無駄を極力抑えられる形でもあるのです。

また、当時の開発担当者の「お客様に愛されるかわいらしい“実”であってほしい」との願いもあり、六角形のパイの実が誕生しました。(五十嵐)

(※「パイの実」の商品名については文末 “ロッテのこだわり”を参照)」

4つの穴で水蒸気を逃がす

焼く前のパイは、水分を含んだマーガリンとパイ生地を交互に重ねています。これに熱が加わると、マーガリンの中の水分が熱せられ、水蒸気が発生します。この水分が液体から気体へ変化すると体積が膨張して生地の間に空間ができ、パイが膨らみます

六角形に型抜きしたあと、表面には4つの穴を開けます。この穴が、生地をオーブンに入れて加熱したときに発生する水蒸気の逃げ道になっているのです。

「水蒸気には逃げ道となる穴が必要です。逃げ道がなければ風船みたいにパンパンに膨らんでしまいますし、穴が1つでは平行に浮かず、面がぼこぼこしてしまいます。逃げ道が4つあることで、均等に水蒸気が逃げ、一層一層がきれいに浮き上がるのです」(ロッテ中央研究所 チョコ・ビス研究部 ビスケット研究課 原拓也)

麦芽糖がつやと食感をプラス

つやのあるビジュアルとカリッとした食感。これを生み出しているのが、オーブンに入れる直前、表面にうっすらとかけている麦芽糖です。

「お客様のなかにはこの部分が大好きで、まずそこから召し上がる方も。ほどよい甘さとカリカリとした食感が好まれるのだと思います」(五十嵐)

麦芽糖はパイの実のおいしさを語る上で外せません!

さらに香ばしく! 40周年を機にリニューアル

パイの実は、2019年に誕生40周年を迎えました。それを機に、パイ生地がリニューアルされたのをご存じでしょうか。

新しくなったのは“香ばしさ”。パイの実の封を開けた瞬間、パン屋さんに足を踏み入れたときの「焼きたてパン」のような香りが広がります。この何とも言えない香ばしい香りの秘密は、パイ生地に練り込んだパイオイルにあります。

「パイオイルとは、香ばしい香りの要素を凝縮したオイルのこと。有名ベーカリーのクロワッサンもヒントに、香気成分を分析し、どの成分が焼きたての香りに関係しているのかを突き詰めていきました。その結果から得られた要素をオイルに閉じ込め、生地に配合することで、まるで焼き立てのような香りを楽しんでいただけることができるようになったのです」(五十嵐)

より香ばしくなったパイ生地に合わせ、チョコも新しくなりました。その詳細は後半にお届けします。

さて、ふっくらサックサクおいしく焼き上がったパイ生地にチョコをどう入れ、パイの実はできあがるのでしょうか。後半では、「焼き上がった繊細なパイを壊すことなくチョコを注入する」ためのこだわりをお届けします。

の こだわり

「パイの実」の由来とは

パンノキ

「一口サイズのパイ菓子」の商品名が「パイの実」になったのはなぜでしょうか。そこにはデザイン担当者の特別な思いがありました。

当時まだ開発段階だった試作品を口にした瞬間、デザイナーの頭には、子どものころに雑誌で見たパンのような風味がする実をつける「パンノキ」と名付けられた熱帯植物のことがよみがえったのです。そこで即座にスケッチブックを手に取り、「パイが次々となる木」がある森をイメージしてデザインを描き起こし、「パイの実」と名付けました。こうして「パイの実」という商品名が誕生しました。

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