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料理家 栗原友

私の母は栗原はるみという料理家です。

母は私が幼稚園児だった頃から仕事をしていました。料理家の母を持っている=口にするもののほとんどが手作りだろう、と思いますよね。実際にそうでした。仕事柄、試作が重なると同じメニューを何度も何度も食べさせられていましたが、嫌だった思い出はありません。なので、私は絵に描いたような「手作り菓子で育った子」です。今の言葉で言う「意識高い」ってやつでしょうか。母を褒めちぎるわけではないですが、母のお菓子が好きだったんです。

母から私へ、そして娘へ

母は仕事現場に赴く時や来客の時、前日になると必ずキッチンに立ってあるお菓子を焼いていました。「シフォンケーキ」です。ふわふわで、軽くて甘さ控えめで、このケーキにゆるい生クリームをつけて食べるのが大好きでした。母はたまにキャラウェイシードを使ったシフォンケーキも焼いていました。もしかしたらこれが私にとってのはじめてのスパイスだったのかもしれません。香りも風味もかなり強いものですが、子どもながらに「これが食べられる私はかなりオシャレだ」と思っていました。

シフォンケーキのレシピが載っている『栗原さんちのおやつの本』(1991年、文化出版局 刊)

そんな私はスパイス大好きな大人に育ち、今ではカレーを作る時にはスパイスを選ぶことから始めます。インドへ行ったり、友人が主宰するインド料理教室に通ったりしてスパイス料理を勉強し、私の生活には欠かせないものとなりました。なので、私の娘も自動的にスパイス料理が好きな子どもに育ちます。四川麻婆豆腐なんて大好物です。いい食育ですね。

最近の母はシフォンケーキからチーズケーキにシフト。娘を連れて実家に帰ると(といっても自宅から自転車で5分ほどですが)「ミンミ(母の愛称)のチーズケーキ食べたい」とおねだり。さすが母、かなりの高確率で焼いてあるんです。私にとっての母のお菓子はシフォンケーキ。娘にとっておばあちゃんのお菓子はチーズケーキ。親子で母のお菓子が大好きです。この原稿を書いていて気付きましたが、そろそろ私もお菓子作りに挑戦しないといけない雰囲気ですね。まずはシフォンケーキから習ってみることにします。

栗原 友(くりはら・とも)
栗原 友(くりはら・とも)
1975年、東京都生まれ。母は料理家の栗原はるみ。ファッション誌のフリーエディター、アパレル会社のPRを経て2005年より料理家として活動を開始。2012年から4年間、築地「斉藤水産」に勤務した。現在は料理教室を中心に活動する傍ら、魚料理の啓発や、魚を用いた食育に力を入れている。著書に『クリトモの大人もおいしい離乳食』(扶桑社)、『クリトモのさかな道 築地が教えてくれた魚の楽しみ方』(朝日新聞出版)、『寝ている間においしくなる』(祥伝社)などがある。魚の卸売業「株式会社クリトモ」代表取締役。
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