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アイスをやわらかいおもちで包んだ「雪見だいふく」は、その丸い形状と食感が多くの人をほっこり和ませてきました。ロッテのお菓子のおいしさの秘密を探る「探検 お菓子の原材料」では、2回にわたり、雪見だいふくの“おもち”に注目。冷凍下でもやわらかいおもちの秘密に迫りました。

日本人が好むおもちをアイスの素材に

「雪見だいふく」は、モナカでもコーンでもなく「おもちでバニラアイスを包む」という新発想から、1981年に発売されただいふく風アイス。当時は、時間が経つほど硬くなるおもちをアイスにするのは未知の領域。アイスにおもちを使うという発想はどこから生まれたのでしょうか。

「その当時アイス市場では後発メーカーだったロッテが、シェアを拡大するには、インパクトの強い商品が必要でした。菓子メーカーの技術を生かし、菓子素材とアイスを融合させるという狙いもあり、福岡の銘菓をヒントにアイスを開発した。それが、雪見だいふくの前身となるバニラアイスをマシュマロで包んだ『わたぼうし』です。販売は好調だったのですが、それだけにもっと幅広い層に訴求できるアイスが作れるのではという期待も高まりました。そこで多くの素材を検討したところ、日本人が好むおもちを使った“だいふく風アイス”にたどり着いたのです」(ロッテ中央研究所 アイス研究課・矢木)

だいふく風アイスをつくるには、冷凍下であってもおもちのやわらかさを保つことが求められます。それを実現させているのが、ロッテ独自の技術やオリジナルレシピによるこだわりの製法です。

では、そのこだわりを見ていきましょう。

おもちは自社生産

他社のおもちを使ったアイスの場合、おもち自体の生産は原材料メーカーに委託することも多いですが、ロッテでは雪見だいふくのおもちを自社生産しています。

原料となるのは、もち米を乾燥させて挽(ひ)いた「もち米粉」。もち米の産地や品種はもちろん、粉砕方法、乾燥方法、仕上がった粒の大きさなどにも徹底的にこだわり抜いたもち米粉「羽二重粉」を使っています。

「羽二重粉」が生み出す滑らかな食感

「羽二重粉」の最大の特長は粒子が非常に細かいこと。これにより、雪見だいふくが理想とする食感が得られるのです。

「開発当時、原料の選定や製法を確定するまでには、多くを試し、検討しました。その過程で注目が集まったのが、羽二重粉の粒子の細かさでした。羽二重粉を用いると、おもちが滑らかで口どけがよい仕上がりに。それが決め手になりました」(ロッテ中央研究所 アイス研究課・澤田)

絶妙な糖分の配合比率

雪見だいふくのおもちには砂糖や水あめといった糖分を配合しています。おもち部分を食べていただくと、甘みがしっかり感じられるのがわかるはずです。糖分は、おもちの中の水分を保持してくれることから、おもちのやわらかさを保つには欠かせない原料。糖分の配合比率がやわらかさを調整すると言っても過言ではありません。

アイスは賞味期限が省略でき、一定の条件下にあれば長期保存が可能な商品です。そのため、長期間、冷凍下にあっても、変わらない味や食感が求められます。また、雪見だいふくは、おもちとアイスを一体化させたのち、急速冷凍させて仕上げるため、温かいおもちを急に冷やしても硬くならないような工夫が必要です。開発時は、そうした視点で何度も試作を繰り返し、絶妙な糖分の配合比率を導き出し、オリジナルレシピを完成させました。

小ロットでの生産

おもちの生産に重要なのは、「蒸練(じょうれん)」と呼ばれる工程です。
蒸練機の中で水と一緒に投入した羽二重粉を蒸しながら練り、そこにでん粉や糖分などの材料を加えてさらに練ります。

蒸練機の大きさは郵便ポスト程度。アイスは大ロット生産が一般的ですが、いっぺんに大量のおもちをつくと弾力が出にくくなるため、雪見だいふくは小ロットで生産しているのです。

おもちをつくる蒸練機

「おもちは練ることで羽二重粉のでん粉がうまく絡み合わさり弾力が生まれます。その工程を大ロットで実現するのは難しく、小ロット生産では手間も増えますが、理想的なおもちを作り出すためにあえて小ロット生産を貫いています」(澤田)

アイスをおもちで包むという新発想の商品化は、ゼロからのスタート。蒸練機や包あん機といった機械の開発、物性の調整、糖組成、熱に耐えられるアイスの配合など、多くの難題と向き合い、様々なパターンを検証し独自の製法を確立できました。その結果、雪見だいふくという唯一無二の商品が誕生したのです。

さて、昨年40周年を迎えた雪見だいふくはおもちをリニューアル。新たな“弾むぷにぷにモチ”が誕生しました。今後も、「国民的ブランド」となるべく飛躍を続ける雪見だいふくにご期待ください。

次回は、温かいおもちと冷たいアイスをどうやって合体させ、だいふく風アイスに成型しているのか、その謎に迫りつつ、“弾むぷにぷにモチ”の魅力をお届けします。

の こだわり

幻の商品「わたぼうし」開発秘話

雪見だいふくは発売当時、アイスの売り上げが冷え込む冬をターゲットに開発された秋冬限定商品でした(2018年から通年販売)。本文冒頭でお伝えした「わたぼうし」(1980年発売)はその先駆け。「冬ににしか食べられないアイス」として生み出された商品ゆえ、パッケージも“冬”を連想させる、当時としては意表を突いたデザインになっています。

わたぼうし誕生のきっかけは、新商品の開発のため日本の郷土銘菓に着目していたアイスクリーム担当の研究員が、出張のおみやげに、某和菓子メーカーの銘菓を買ってきたことにありました。研究員たちはマシュマロで黄身あんを包んだその和菓子を食べ、「黄身あんに代えてバニラアイスをマシュマロで包む」ことを思いついたのです。

わたぼうしはとくに若い方の支持を集め、販売も好調でしたが、当時の開発者がさらに素材に踏み込み、「日本人好みのおもちを使うこと」を提案。かくしてマシュマロを使ったわたぼうしは幻の商品になったというわけです。とはいえ、「アイスをマシュマロで包む」という、このときの発想がなければ、雪見だいふくは生まれていなかったかもしれません。

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