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僕にとってお菓子は、子どものころの懐かしい思い出と結びついています。まず思い出すのは母のこと。お菓子が好きだった母は、プリンやクッキー、ポテトチップスといったスナック菓子をいつも家にストックしていました。僕には兄と弟がいますが、育ち盛りの時期は男3人が一気に食べてしまうため、あるときから母は、お菓子を隠すようになりました。ところが、どうしてもお菓子を食べたい僕は、家中を探して……(笑)。一度、母が大好きだったレーズン入りのクッキーを全部食べてしまったことがあり、そのときはめちゃくちゃ怒られました。あのときの母のブチギレっぷりは、過去最高。こうやって、今でも思い出すくらいですから(笑)。

こたつで「雪見だいふく」の幸せ

おやじはアイスクリームが好きで、冬になると「雪見だいふく」をよく買ってきました。今は一年中買えるそうですが、当時は冬しか買えなかったのだと思います。こたつに入って食べる「雪見だいふく」は、格別。家族そろって食べているとき、今思えばCMか何かで知ったのでしょう、おやじが「これは冬に食べるために開発されたアイスなんだ」と力説していたことを思い出します。幼いころはあまり気に留めていませんでしたが、大人になってから、おやじが言っていたとおりだったと知り、驚きました。そして、筋金入りの「雪見だいふく」ファンだったんだなあ、と確信。この冬もこたつの中できっと食べているはずです。

僕と1つ下の弟が小学生のころは、駄菓子屋がたまり場で、色とりどりの駄菓子を買って食べることを、何よりも楽しみにしていました。僕がよく行く近所の駄菓子屋はなぜか、テレビゲーム機を無料で遊ばせてくれるので、いつも子どもたちでいっぱい。下校後は自宅にカバンを置いたらすぐにその店に向かい、友達と代わりばんこで、ゲームに熱中しながら駄菓子を食べる日々でした。

弟は僕と違う店に通っていました。なぜかというと弟の狙いは、当時大流行だったアーケードゲーム「グラディウス」だったからです。「グラディウス」を置く店は近所になく、自宅から遠くにあり、弟はわざわざそこまで行っていたのですが、そのことを僕は、しばらく知りませんでした。ところが、ある日学校で、「はなわの弟がゲームの名人になっている。むちゃくちゃすごい」といううわさが広まります。僕がこっそり見に行くと、子どもたちに取り囲まれた弟が、たしか麩菓子(ふがし)をかじりながら、「グラディウス」に夢中になっている! そして、ゲーム機の上にはたくさんの100円玉が積み上げられていました。そのときに思ったのは「なぜあいつが、あんなにお金を?」。どうやら出どころは、母の貯金箱。腹が立った僕は、後ろから頭をパコーンとたたいてやりました。

とはいえ駄菓子屋は、子どもたちが安心して集える遊び場。最近はあまり見かけなくなりましたが、当時、親にとってもありがたい存在だったのだと思います。

ときは過ぎ、僕も3人の息子を持つ親となりました。息子たちは全員、柔道に明け暮れる日々。毎日、腹をすかせて帰ってくるため、おにぎりや牛丼といった“腹持ちのいいおやつ”を用意しています。だから、我が家は米の消費量が半端ない(笑)。息子たちがお菓子を食べるのは、試合に勝ったときなどの特別な日。金額を決め、スーパーで好きなお菓子を買って楽しんでいます。はなわ家にとってお菓子は“ご褒美”の1つなのです。

はなわ
はなわ
1976年生まれ。お笑いタレント、シンガー・ソングライター。子どものころに過ごした佐賀県を題材にしたベース弾き語り漫談で注目を集め、2003年のデビューシングル『佐賀県』は社会現象となり、同年の紅白歌合戦に出場。数々のテレビ番組への出演のほか、アイドルのプロデュースも手掛けるなど、幅広く活躍する。2017年、YouTubeで公開し、のちにCD化した、妻に贈った曲『お義父さん』は感動を呼んだ。柔道に励む3人の息子たちの模様は、バラエティー番組でも話題に。弟は、漫才コンビ・ナイツの塙宣之。
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