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有識者ダイアログ MKIAKO AKABANE RUMI IDE YUKI URAGO JUNUCHI MIZUO

当社では、2018年より外部有識者をお招きし、ダイアログを実施しています。ダイアログでは、サステナビリティへの取り組みについて忌憚のないご意見や今後に向けたアドバイスをいただき、活動に反映しています。2023年は、オンラインと対面のハイブリッドで開催しました。

新たに開発した咀嚼チェックアプリによって
取り組みがさらに加速することを期待しています

長年「噛むこと」の普及啓発に取り組まれていますが、新たに開発された咀嚼チェックアプリによって取り組みがさらに加速することを期待しています。私自身も家族と一緒に試しましたが、とても楽しく測定することができました。自身の咀嚼能力を知ることで、「噛むこと」と健康に関する意識が高まると思います。また、世界的なスポーツの大会で選手の方々が試合中にガムを噛んでいたシーンが注目されています。この機会に、パフォーマンス向上や集中力アップなど、スポーツに関する「噛むこと」のメリットを訴求できたらいいと思います。
カカオ豆のトレーサビリティに関する実証実験は、児童労働リスクを減らすための大きな一歩として素晴らしいと思います。フェアカカオについては、2028年目標を50%から100%へと大幅に上方修正されていて驚きました。社会的責任とコストの両立には苦労もあるかと思いますが、ロッテの努力や取り組みストーリーなどを聞いて納得しましたので、もっと社外に向けてアピールすべきです。今後は現地との対話が重要になると思いますが、ガーナで現地視察もされるということで来期でのご報告を楽しみにしています。
全国食支援活動協力会と協力して食品ロス削減と廃棄コスト削減を両立されていますが、こちらも素晴らしい取り組みです。廃棄コスト削減によって捻出された費用を、子ども食堂やフードバンクのサポートに活用されるのもいい取り組みですので今後の展開に期待しています。

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赤羽 真紀子 氏

CSRアジア株式会社 日本代表
赤羽 真紀子 氏

早稲田大学で政治学と生物学を修める。様々な業種の多国籍企業のCSR担当として通算10年以上の経験を有し、スターバックスコーヒージャパン㈱、㈱セールスフォース・ドットコム、日興アセットマネジメント㈱の各社で関連部署の立ち上げを手がける。2010年より現職。

アウトカムを意識して取り組みを進めることも重要です

今回で6回目のダイアログですが、内容がどんどんステップアップしていると思います。TCFD提言に沿った気候変動に関わるリスクと機会の開示など、取り組むべきことを着実に進められていると感じます。ガムの消費量が減少する中、「噛むこと」の普及で人々の健康に貢献する取り組みを進められています。キシリトール咀嚼チェックガムと咀嚼チェックアプリは、普段の食生活であまり噛まない方がどれぐらい噛む力が劣っているかを手軽に測定できる良いツールだと思います。また、キシリトール先進国フィンランドを参考にキシリトールの普及に取り組んでおられますが、アプリを用いた最先端の食品ロス対策など、それ以外の分野でも北欧諸国は参考になると思います。北欧とキシリトールの親和性をうまく活用して、人々に北欧のサステナブルなライフスタイルを紹介するなど、消費者を巻き込んだ活動に期待しています。ESG中期目標達成の推進にあたっては、アウトカムを意識して取り組みを進めることも重要ではないでしょうか。例えば、食育の指標としている食育体験者数についてはアウトプットの指標であって食育を行った結果どうなったかというアウトカムも重要です。工場見学や出張授業を体験された方の一部にフィードバックとして、例えばロッテへの好意度がどのように変化したかなどを調査するとよいと思います。アウトカムの視点を取り入れると、サステナビリティ取り組みの重要性や方向性がよりはっきりすると思いますので、今後目標を見直す際に検討してみてください。

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井出 留美 氏

ジャーナリスト、食品ロス問題専門家
令和2年度食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞者
井出 留美 氏

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン㈱、JICA海外協力隊を経て日本ケロッグ㈱広報室長等歴任。東日本大震災の際に食料廃棄に憤りを覚え、㈱office 3.11設立。日本初のフードバンクの広報を務め、2016年には食品ロス削減推進法成立のきっかけを作った。著書に『賞味期限のウソ』『食料危機』『あるものでまかなう生活』『捨てないパン屋の挑戦』(第68回青少年読書感想文全国コンクール課題図書)他。

噛むことは、いろんな健康につながるということを
もっともっとアピールしてもいいと思います

取り組みを継続的に見させていただいていますが、整理された5つのマテリアリティが、とても進化しており素晴らしいです。中でも重要なキーワードは「健康」だと思います。私もキシリトール咀嚼チェックガムと咀嚼チェックアプリを試してみましたが、結果が分かりやすく、「噛むこと」と歯と口の健康の重要性を再認識することができました。歯と口の健康はもちろん大事ですが、「噛むこと」が私たちの体のいろんな健康につながるということを全世代の方々にもっとアピールしてほしいですね。また、食の安全・安心の取り組みについても注目しています。より厳しい基準のLOTTE ADVANCEの導入はもちろんですが、「みんなで品質保証」の考え方が素晴らしいです。品質保証部門に任せきりにせず、全部署全従業員で品質保証に対する意識を高め、取り組むことがとても大切です。食品ロス削減の課題については、全国のフードバンクや子ども食堂のハブとなっている全国食支援活動協力会と協力して出荷できなかった余剰製品の寄付を拡大されています。お菓子の寄付はすごく喜ばれると聞きますし、廃棄せずに有効活用できるのはとてもいい試みで、社会面でも環境面でも有意義な取り組みです。エシカル消費では、大量生産・大量消費の時代に生きた私たちの世代よりも、若い人のほうがエシカルにとても興味を持って活動に取り組んでいるので、若い世代に向けて訴求していくといいかもしれません。

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浦郷 由季 氏

一般社団法人全国消費者団体連絡会前事務局長
浦郷 由季 氏

大学卒業後、7年間の会社勤めの後、専業主婦として子育てをしながら生協の活動に関わる。
生活協同組合ユーコープ、日本生活協同組合連合会の理事を経て、2017年5月~2023年5月、全国消費者団体連絡会の事務局長を務める。厚生労働省、食品安全委員会、消費者庁などの審議会等委員も務めた。 消費者団体の全国的な連絡組織で、くらしに関わる様々なテーマについて、審議会への委員参加やパブリックコメントの提出などを通じて消費者の立場から意見発信をしている。

ジェンダーの視点を取り入れると
社会課題に対する視野が広くなります

人生100年時代のウェルビーイングを「噛むこと」で支えるのはとてもいい考え方です。人口減少と少子高齢化は大きな社会課題であり、今後の社会を維持していく上で、高齢者の健康寿命をいかに伸ばすかがとても重要です。特に人口のボリュームゾーンとなるのが高齢女性です。更年期を迎えて女性ホルモンが急激に減ることで、免疫力が低下したり、唾液量が減って歯周病菌が増えたりするなど、女性特有の健康リスクが高まると言われています。「噛むこと」にジェンダー視点から注目することで、取り組みが深化し、社会的インパクトが拡大することを期待しています。男性の育休取得率ですが、高いスコアで素晴らしいと思います。しかし、育休取得期間も重要です。家事や育児などの「ケアワーク」をパートナー間で共に担う土台を作るのが目的だからです。そのような職場が増えれば、若い世代が求めている「共働き・共育てが可能な社会」が実現するのです。今後は部署によって異なる課題にそれぞれ対応しつつ、期間の延長も推進できるといいですね。これらのように、ジェンダーの視点を取り入れると社会課題に対する視野が広くなります。牛膓社長はWEPsに署名し、自らコミットメントを示されていることは大変素晴らしいと思います。DEIの推進と、ジェンダー視点のあるロッテノベーションの実現は、持続的な成長の鍵になることでしょう。そのために、WEPsを活用してください。

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大崎 麻子 氏

(特活)Gender Action Platform理事
関西学院大学総合政策学部客員教授
大崎 麻子 氏

米国コロンビア大学国際関係修士(国際人権専攻)。国連でジェンダー平等と女性のエンパワーメントを担当し、女性の教育、雇用・起業、政治参加等を手がける。現在は、国際と国内、公共と民間をつなぐ専門家として活動中。内閣府男女共同参画会議専門委員、ISOジェンダー平等ガイドライン国際ワーキンググループ日本代表エキスパート等を務める。「女性のエンパワーメント原則(WEPs)」日本版ハンドブックを企画・制作。

新しい未来を先取りすると思って、
楽しみながらサステナビリティ活動を推進してください

毎年継続してダイアログに参加させていただいており、だんだん進歩していく様子がとてもよく分かります。持続可能な調達は特に重要な課題です。特にパーム油は様々な課題を含んでおり、きちんとした対応が求められます。TCFD提言に基づいた気候変動リスクと機会の開示を進められていますので、気候変動以外にも生物多様性や人権課題などの様々なシナリオを想定して、将来的な対応策を検討されるとよいと思います。また、女性管理職を急激に増やすのは難しいとは思いますが、目標をもう少し高くしてもいいかもしれません。男性育休取得率については業界をリードする高い実績で、素晴らしいと思います。今後は取得率だけでなく、取得期間にも注目して取り組みを検討してください。近年はテレワークなどの柔軟な働き方のなかでの育児と仕事の両立が可能となりつつありますので、それらを把握できる新たな指標も検討の余地があります。食と健康に関する取り組みは、定量的な指標だけでなく、どのように人々や社会に貢献していくかについて、ストーリーで説明することも有効です。説得力のあるストーリーを用いてナラティブに説明することで、より多くのステークホルダーを巻き込めると思います。また、ロッテグループのアセットをうまく活用することも検討してください。企業でのサステナビリティ活動は、コストや既存業務などと対立することもある大変な仕事と思われがちですが、本来は未来志向の取り組みなので、新しい未来を先取りすると思って、楽しみながらサステナビリティ活動を推進してください。

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蟹江 憲史 氏

慶應義塾大学大学院
政策・メディア研究科 教授
蟹江 憲史 氏

同大学SFC研究所xSDG・ラボ代表。北九州市立大学助教授、東京工業大学大学院 社会理工学研究科准教授を経て、2015年より現職。2023年Global Sustainable Development Report執筆の15人の独立科学者の一人に国連事務総長から選出されている。専門は国際関係論、サステナビリティ学、地球システム・ガバナンス。SDGs研究の第一人者であり、研究と実践の両立を図っている。博士(政策・メディア)

カカオ豆のトレーサビリティに関する実証実験は
日本のチョコレート業界にとって大きな刺激になると思います

目標を期限や数値付きで明確に設定し、社内外できちんと浸透しているからこそ着実な達成に繋がってきていると思います。人権尊重の取り組みを含め、今後のさらなる推進にも期待しています。持続可能な調達において、新たに開始されたカカオ豆のトレーサビリティに関する実証実験は、日本のチョコレート業界にとっても大きな刺激になる内容だと思いました。技術を使ってトレーサビリティを確保し課題を可視化するユニークなアプローチだと思います。さらに見つかった課題をいかに解決していけるのかが重要ですので、次のステップにも期待しています。サプライチェーンにおける生活賃金や森林の問題などへの取り組みも今後進むと、事業部門や調達部門を含む全社的な巻き込みがさらに重要になると思います。社員の教育や評価基準にサステナビリティ側面を盛り込むなどして、社員がサステナブルな事業活動に取り組みやすい環境をつくっていくことも考えられます。咀嚼チェックアプリや全国食支援活動協力会との協業など、事業の特徴を生かした多様な社会貢献の取り組みを進められていて素晴らしいと思いました。マテリアリティについて詳細に説明されていますが、食と健康については具体的に誰のどういう課題について解決できるような指標なのかを社会的インパクトと共に説明すると、より多くの人にとって理解が深まると思います。

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潮崎 真惟子 氏

認定NPO法人フェアトレード・ラベル・ジャパン 事務局長 潮崎 真惟子 氏

デロイト トーマツ コンサルティングを経てオウルズコンサルティンググループにてマネジャーを務める。コンサルタントとしては人権デュー・ディリジェンス、サステナビリティ戦略、政策立案などを多数担当。「児童労働白書2020 ―ビジネスと児童労働―」執筆。一橋大学経済学部卒、同大学経済学研究科修士(地域開発)。人権・労働分野の国際規格SA8000の監査人コース修了。

ダイアログを受けて:

社外からのご意見やアドバイスを反映して
サステナビリティ活動と情報開示を深化させてまいります

当社の事業は様々なステークホルダーの皆さまとの関わりで成り立っており、持続的な成長を遂げていくためには、ステークホルダーの皆さまと良好な関係を構築し、価値を共創していくことが不可欠と考えています。そこで、ステークホルダーの皆さまの意見をサステナビリティ活動や情報開示に反映するため、外部有識者の皆さまと継続的にダイアログを行っております。前回のダイアログでは、当社らしいサステナビリティ活動への期待を多くいただきましたので、ブロックチェーンを活用したカカオ豆トレーサビリティに関する実証実験や噛む力を測定するアプリのリリースなど、独自性にこだわって取り組みを深化させております。
また、今回は目標に関するアドバイスもいただきました。当社は2048年に創業100周年を迎えます。この100周年に当社がどうあるべきかを議論し、そこに至る道筋をバックキャスティングで考え、目標を深化させようと準備していますので、どうぞご期待ください。

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佐藤 利弘
株式会社ロッテ 常務執行役員

サステナビリティ

有識者ダイアログ MKIAKO AKABANE RUMI IDE YUKI URAGO JUNUCHI MIZUO

㈱ロッテでは、2018年より外部有識者の方をお招きし、ダイアログを実施しています。ダイアログでは、サステナビリティへの 取り組みについて忌憚のないご意見や今後に向けたアドバイスをいただき、活動に反映しています。2022年は2021年に引き続き、 新型コロナウイルス感染拡大を防止するためオンラインにて実施しました。

食の安全への思いをもっとアピールしてください

食の安全・安心は、事業の中で最も大事なところです。より厳しい基準のLOTTE ADVANCEは、お金だけでなく時間や従業員のエネルギーが投入されています。特に製造や調達の現場に携わる方は日々、安全な食品を提供するために努力されていますので、その熱い思いをもっとアピールしてください。
キシリトールや「噛むこと」を生活に取り入れようという活動が評価され、消費者志向経営を受賞されました。食と健康は事業の中心ですので、5つのマテリアリティに濃淡をつけてもよいと思います。「噛むこと」やキシリトールは、会社を横串として貫く共通価値であり、強みですので、ぜひ強調されるべきです。高齢化は先進国だけでなく、途上国でも課題になりますので市場にも高い訴求力があります。
食品ロス削減は喫緊の課題ですが、より価値の高いリサイクル方法を求める姿勢をぜひ発信してください。リサイクルした飼料を食べる牛のミルクがお菓子に使われるなどのストーリーがあるといいですね。世界では、サプライチェーンに関わる全ての人と家族が生活できる賃金を支払うことが調達のテーマになっています。
ロッテさんは、フェアカカオや認証油の購入など持続可能な調達を進められていますので、今後の展開を楽しみにしています。そういう意味でDari Kのノウハウを学ばれるのはすばらしい経営判断だと思います。

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赤羽 真紀子 氏

CSRアジア株式会社 日本代表
赤羽 真紀子 氏

経歴:早稲田大学で政治学と生物学を修める。様々な業種の多国籍企業のCSR担当として通算10年以上の経験を有し、スターバックスコーヒージャパン㈱、㈱セールスフォース・ドットコム、日興アセットマネジメント㈱の各社で関連部署の立ち上げを手がける。2010年より現職

社会の変化に合わせ、常に取り組みをアップデートしてください

70年史やレポートを拝見し、ロッテが量から質へというステージにきているように感じています。ライフサイクルの短い新商品を数多く出すより主力商品に注力して育てていくのは良い考え方です。
グローバルでのサプライチェーン管理のために、Sedexでサプライヤーの人権や環境についての情報を効率的に管理することは、ロッテとサプライヤーの両社にメリットがあり、とても良い取り組みだと思います。
今年4月にプラスチック資源循環促進法が施行されました。それに合わせて、使い捨てプラスチック削減などの数値目標をレポートに盛り込んでいくことも必要です。社会の変化とともに、マテリアリティや取り組みをアップデートすることが、ロッテと社会のサステナビリティにつながっていきます。
食品ロス削減には、商品として流通する期間を適切に伸ばすことが大切です。賞味期限の延長や年月表示化を進めていますが、まだ年月日表示の商品が残っており、さらなる進捗を期待しています。
カカオの未利用部分を使って染めたネクタイは、ロッテらしい試みですね。
昨年も申し上げましたが、商品パッケージを、もっとお客様とのコミュニケーションに活用できると思います。機能性については上手に表示されていますので、歴史やサステナビリティ取り組みなどの紹介も期待しています。

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井出 留美 氏

ジャーナリスト、食品ロス問題専門家
令和2年度食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞者
井出 留美 氏

経歴:奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン㈱、JICA海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。東日本大震災の際に食料廃棄に憤りを覚え、㈱office 3.11設立。日本初のフードバンクの広報を務め、2016年には食品ロス削減推進法成立のきっかけを作った。著書に『賞味期限のウソ』『食料危機』『あるものでまかなう生活』『捨てないパン屋の挑戦』(第68回青少年読書感想文全国コンクール課題図書)他

エシカル消費に関心の高い若い世代に発信を

消費者志向経営優良事例表彰特別賞の受賞おめでとうございます。ロッテの企業理念は消費者志向そのものです。理念が社内で共有され、会社の風土になっていきます。今までやってきたことをさらに進化させていってください。
消費者から、アフリカのカカオ生産地での児童労働についての問い合わせがあると聞きました。人権に対する考え方を社内に浸透させ、今後も取り組みを継続して進めて欲しいと思います。SDGsの達成や持続可能な社会が重要だと消費者が意識するようになり、エシカル消費も少しずつ広まっています。それらに関心の高い若い世代に向けて発信していくことが重要です。
コロナを契機にリモートワークが進み、仕事と生活のバランスをとれることが、従業員の働きがいにつながっているのだと思います。リモートでもコミュニケーションが円滑にとれるようにチャットを活用されている点も良いですね。
食の安全・安心への取り組みを消費者に伝えるには、体験しながら学べる工場見学が有効だと思います。食と健康では、噛むことを意識して実践している人を増やすことを目標にされていますが、そこに楽しさが加わると消費者も受け入れやすくなります。ロッテのサステナビリティの取り組みはすばらしいので、ぜひ積極的に発信してください。

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浦郷 由季 氏

一般社団法人全国消費者団体連絡会事務局長
浦郷 由季 氏

経歴:大学卒業後、7年間の会社勤めの後、専業主婦として子育てをしながら生協の活動に関わる。生活協同組合ユーコープ、日本生活協同組合連合会の理事を経て、2017年5月より現職。厚生労働省、食品安全委員会、消費者庁などの審議会等委員を務める※消費者団体の全国的な連絡組織で、くらしに関わる様々なテーマについて、審議会への委員参加やパブリックコメントの提出などを通じて消費者の立場から意見発信をしている

消費者と価値の共有を図ることが、社会課題解決やSDGs達成につながっていきます

全体としては、とてもいい方向に進んでいると思います。自治体と協力した食と健康の取り組みが評価され「消費者志向経営優良事例表彰」を受賞されましたが、消費者志向経営は未来・次世代のための取り組みを重視しており、SDGs、サステナビリティと親和性があります。コミュニケーションを通して消費者と価値の共有を図ることが、社会課題解決やSDGs達成につながっていきます。こういった評価や会社の姿勢をレポートにしっかりと出していくことが大事です。また、取り組みの事実や結果だけでなく、その背景や苦労した点などをナラティブに記述することで、ロッテが目指していることを世の中に示すことにもつながります。
ESG中期目標の「食の安全・安心」では、GFS(I Global Food Safety Initiative)にコミットして認証を受けることや、独自の品質保証システムLOTTE ADVANCEのように業界をリードする取り組みが非常に良いと思います。また、気候変動に関するリスク/機会分析を進めていることやSBT(Science Based Targets)にコミットしたことは評価できます。今後は、取り組みを生物多様性やサプライチェーンマネジメントにも広げていくことを期待します。
カカオ豆のサステナビリティに取り組んできたDari Kがグループに参加されたことで広がる新たな可能性にも期待しています。

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蟹江 憲史 氏

慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 教授
慶應義塾大学SFC研究所xSDG・ラボ代表
蟹江 憲史 氏

経歴:北九州市立大学助教授、東京工業大学大学院 社会理工学研究科准教授を経て、2015年より現職。2023年Global Sustainable Development Report執筆の15人の独立科学者の一人に国連事務総長から選出されている。専門は国際関係論、サステナビリティ学、地球システム・ガバナンス。SDGs研究の第一人者であり、研究と実践の両立を図っている。博士(政策・メディア)

高い目標設定が素晴らしい
商品開発力も活かし市場変革をリードしてほしいです

サステナビリティレポート2021は一般の方でも読みたくなる工夫があり、コミュニケーションを重視されているロッテらしさが表れていました。高い目標を設定され、全社で取り組む姿勢は素晴らしいです。その分、今後の進捗にも注目が集まりますね。RSPO認証、Sedexなど外部のプラットフォームを活用して業界全体のサステナビリティにも貢献しながら取り組んでいる点が評価できます。
また、人権デューデリジェンスは国内の業界でも先進的なレベルにあると評価できますが、児童労働、強制労働といった人権課題への対応をさらに進めるには、NGOなど外部視点でのチェックやサプライヤー向け通報窓口の開設もお勧めします。
また児童労働の原因でもある農家の低収入や森林破壊などを含め、今後もカカオ生産地の幅広い社会課題の解決への取り組みを期待しています。
5つのマテリアリティは、独自性が分かりにくい点が気になりました。今後見直しされる際には、ロッテの注力ポイントである食と健康やカカオ豆の調達など、是非より具体的なものにしてください。ダイバーシティでは、男性の育休取得率が60%へと飛躍的に向上したことはすばらしいですね。他の取り組みについても今後のスピードアップを楽しみにしています。
ロッテがキシリトールの商品で効果を紹介されたことで消費者の意識や行動が変わりました。商品開発力はロッテの強みです。今後も消費者の意識まで変えてしまうような素敵なエシカルチョコの開発などを期待しています。

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潮崎 真惟子 氏

認定NPO法人フェアトレード・ラベル・ジャパン 事務局長 潮崎 真惟子 氏

経歴:デロイト トーマツ コンサルティングを経てオウルズコンサルティンググループにてマネジャーを務める。コンサルタントとしては人権デュー・ディリジェンス、サステナビリティ戦略、政策立案などを多数担当。「児童労働白書2020 ―ビジネスと児童労働―」執筆。一橋大学経済学部卒、同大学経済学研究科修士(地域開発)。人権・労働分野の国際規格SA8000の監査人コース修了

ダイアログを受けて:

社外からのご意見やアドバイスを反映してサステナビリティ活動と情報開示を進化させてまいります

外部有識者の方々とのダイアログは、当社に対して客観的なご評価やアドバイスいただける大変貴重な機会で、頂いたご意見をサステナビリティ活動や情報開示に反映しています。例えば、昨年のダイアログでアドバイス頂いたSDGsの169のターゲットへの貢献については、サステナビリティデータブック2022(P8)でESG中期目標とターゲットの関係を明確にしています。また、使い捨てプラスチックの削減についてもご指摘いただいておりましたが、キシリトールブランドを中心に、容器包装のプラスチック使用量削減も進めています。
さらに、アドバイスを参考にしてESG中期目標のアップデートを行っており、今年はカカオ豆の持続可能な調達に関する目標の上方修正を行いました。ちょうど、Dari Kがグループ入りしたタイミングと重なったこともあり、このテーマについて当社への大きな期待を感じました。この期待を裏切ることがないよう取り組みを推進してまいります。
これからも社外からのご意見やアドバイスを反映してサステナビリティ活動と情報開示を進化させてまいりますので、どうぞご期待ください。

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佐藤 利弘
株式会社ロッテ 常務執行役員

サステナビリティ

有識者ダイアログ MKIAKO AKABANE RUMI IDE YUKI URAGO JUNUCHI MIZUO

㈱ロッテでは、2018年より外部有識者の方をお招きし、ダイアログを実施しています。ダイアログでは、サステナビリティへの取り組みについて忌憚のないご意見や今後に向けたアドバイスをいただき、活動に反映しています。2021年は2020年に引き続き、新型コロナウイルス感染拡大を防止するため、オンラインにて実施しました。

様々な活動が着実に進んでいると評価しています

あらゆる活動に対して誠実に取り組み、着実に進んでいると評価しています。サステナビリティレポートでの情報開示も毎年分かりやすくなっています。今後も、自信を持って開示していくべきです。発信していくことで、自分たちが気づくこともあると思います。特に2020年はコロナ禍によるパラダイムシフトが起こる中で、どのような変革が起きたか、難しかったことも含めて、発信すると良いと思います。
開示に関しては、海外の人材に関するデータの拡充が望まれます。人事データの集計基準は国内外で異なり難しい面もありますが、労災に関するデータなど、優先順位の高いものから開示に取り組んでほしいです。また、海外子会社の取り組みをもっと開示してほしいです。インドネシアにおけるムスリムへの配慮など、地域によって異なる課題への対応について、詳しく開示してほしいと思います。
「持続可能な調達」は、環境問題、人権、コミュニティ面が複合的に関わっている分野です。パーム油の調達でRSPOと連携しているように、各領域での活動団体と提携するのも良いと思います。さらに、海外ではアニマルウェルフェアも注目を集めていますが、サプライヤーやNGO等とパートナーシップを組みながら、サプライチェーンのマネジメントについて検討していってほしいです。

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赤羽 真紀子 氏

CSRアジア株式会社 日本代表
赤羽 真紀子 氏

経歴:早稲田大学で政治学と生物学を修める。様々な業種の多国籍企業のCSR担当として通算10年以上の経験を有し、スターバックスコーヒージャパン㈱、㈱セールスフォース・ドットコム、日興アセットマネジメント㈱の各社で関連部署の立ち上げを手がける。2010年より現職

製品の調達ストーリーなど、どんどん発信してほしいです

ダイアログの参加は4回目ですが、一部製品で賞味期限の年月表示を開始するなど、ダイアログの内容が反映されていく様子を見ています。サステナビリティレポートでの開示に工夫も見られます。実績ハイライトのページはグラフ化されたことで、目標への進捗が非常に分かりやすくなりました。
食品ロス削減とコミュニティへの参画の観点で、フードバンクへの寄付を継続されていると思いますが、関わり方は製品の寄付に限りません。フードバンクの団体は、小さな団体であることも多く、寄付品を保管する場所がないという課題もあります。冷蔵庫や冷凍庫の一部を保管場所として提供するなど、新たな貢献も検討してほしいです。
SDGsの認知度が高まる中、消費者とのコミュニケーションの重要性も増しています。社内では当たり前になっていることも、社外には知られていないことが多いので、どんどん発信してほしいです。消費者との大きなコミュニケーションツールの1つになるのは、製品パッケージです。調達のストーリーを伝えたり、賞味期限と消費期限の違いを啓発したり、様々な活用法があると思います。ロッテだからできる発信を引き続き考えていってほしいです。

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井出 留美 氏

ジャーナリスト、食品ロス問題専門家
第2回食生活ジャーナリスト大賞(食文化部門)受賞者
井出 留美 氏

経歴:奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学 女子栄養大学大学院)、修士(農学 東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン㈱、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。東日本大震災の際に、食料支援で食料廃棄に憤りを覚え、誕生日を冠した㈱office 3.11設立。日本初のフードバンクの広報を委託され、PRアワードグランプリソーシャルコミュニケーション部門最優秀賞へと導く。著書に『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』、『あるものでまかなう生活』など

ロッテが果たす役割の大きさを改めて感じています

2020年はコロナ禍で、社会全体が大変な年でした。ロッテには、工場にお勤めの方など在宅勤務ができないエッセンシャルワーカーの方もたくさんいると思います。食の安全・安心はもちろんのこと、従業員の健康など細心の注意を払いながら事業活動を継続するという、大変な日々が続いているのではないかと想像しています。自粛期間の長期化で、私自身も疲弊する場面もありましたが、そんな時お菓子を食べると気持ちが和みました。不安感がある社会情勢で、ロッテが果たす役割の大きさを改めて感じています。
様々な出来事がある中、2020年7月にはレジ袋が有料化されました。衛生意識の高まりで、使い捨てプラスチックは衛生的という意見もありましたが、エシカル消費やプラスチックごみへの注目は変わらず高まっています。特に高校生や大学生など若い世代の関心は、非常に高いと感じています。
2028年までに、「『噛むこと』を意識して実践している人の割合」を50%以上にする目標を達成するために、様々な取り組みや研究結果を、一層伝えていってほしいと思います。噛むことで連想することの1つは、チューインガムです。チューインガムで創業したロッテだからこそ、ガムを噛むときの新たなマナーや、新しい楽しみ方を発信するなど、工夫を続けてほしいと思います。

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浦郷 由季 氏

一般社団法人全国消費者団体連絡会事務局長
浦郷 由季 氏

経歴:大学卒業後、7年間の会社勤めの後、専業主婦として子育てをしながら生協の活動に関わる。生活協同組合ユーコープ、日本生活協同組合連合会の理事を経て、2017年5月より現職。厚生労働省、食品安全委員会、消費者庁、消費者委員会などの審議会等委員を務める※消費者団体の全国的な連絡組織で、くらしに関わる様々なテーマについて、審議会への委員参加やパブリックコメントの提出などを通じて消費者の立場から意見発信をしている

SDGS目標年までの9年間を有意義に使ってほしいです

「サステナビリティレポート2020」と比較して、非常に分かりやすくなりました。2020年は、コロナ禍もあり、SDGsの関心が非常に高まった年でした。様々な企業のSDGsを見る中で、表面的な取り組みなのか、本気で取り組んでいるのか、その差がクリアになってきたと感じた年でもありました。今後は、SDGsの169のターゲットへの貢献にも踏み込んだ取り組みを期待しています。
特に、食に関する目標やターゲットへは一層貢献できると思います。健康に寄与する製品はどのターゲットに貢献するのか、エビデンスをもとに価値創造のストーリーを開示してほしいです。また、製品のライフサイクルに関わる取り組みを、消費者とのパートナーシップという観点から推進してほしいです。消費者の社会課題への関心も高まっている中で、パッケージの廃棄に困る場面もあると思います。例えば、食べ終わった製品の容器を回収できないかなど、消費者とコミュニケーションを取りながら、一緒に新たな価値を創造する取り組みを期待しています。SDGsの目標年の2030年まで、9年あります。SDGsに真面目に取り組んでいるロッテだからこそ、時間を有意義に使い、更なる飛躍を遂げることを楽しみにしています。

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蟹江 憲史 氏

慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 教授
蟹江 憲史 氏

経歴:慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科後期博士課程修了。博士(政策・メディア)。北九州市立大学助教授、東京工業大学大学院 社会理工学研究科准教授を経て、2015年より現職。2023年Global Sustainable Development Report執筆の15人の独立科学者の一人に国連事務総長から選出されている。2014年より国連大学サステイナビリティ高等研究所シニアリサーチフェロー、2020年より同非常勤教授を務める

ロッテならではの新しい価値創造を期待しています

昨年度からダイアログに参加していますが、良い形で進んでいると思います。野心的な目標が多く、パーパスが設定されている点も評価できます。次に設定してほしいのは、ビジョンです。特に、パンデミックによって在宅勤務などが普及したことで、会社とは何か再定義が必要だと思っています。これまでは出社していれば、自然と会社の一員になれるような錯覚があったと思いますが、これからは、どこにいても同じ目的を共有している集団であるべきです。会社の本来の意味が問われている時代だからこそ、ビジョンは、従業員の拠り所や働きがいの源泉となり、大きな役割を果たすと思います。
また、「従業員の能力発揮」では、従業員が創造的貢献をできる風土醸成も重要です。従業員にとって、自分の仕事が社会を良くしているという実感がモチベーション向上につながり、イノベーションが起こりやすい環境が作られます。ロッテは、身近な幸せと大きな幸せを実現できる会社だと思います。チョコレートを食べておいしいと感じると同時に、そのチョコレートでカカオ農家は生計を立てられるようになる。会社の内外のステークホルダーを大切にしながら、新しい価値を発揮し続けてほしいです。

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ピーター D.
ピーダーセン 氏

NPO法人 NELIS代表理事
大学院大学至善館教授
ピーター D.ピーダーセン 氏

経歴:デンマーク生まれ。コペンハーゲン大学文化人類学部卒業。1984年から日本での活動を開始。2000年に㈱イースクエアを共同創業、代表取締役社長に就任。2011年同社共同創業者に。2014年からは㈱トランスエージェント内リーダーシップ・アカデミーTACL 代表に就任。2015年には(一社)NELIS 次世代リーダーのグローバル・ネットワークの共同代表に就任。2019年より大学院大学至善館教授を務める。2020年より現職

ダイアログを受けて:

持続可能な社会の実現に向けて、私たちに期待されていることに着実に取り組んでまいります

今年もステークホルダーを代表して5名の外部有識者の方々とダイアログを実施いたしました。私たちの1年間の活動結果を客観的にご評価いただき、さらにこうしたら良いのにとのアドバイスをいただける大変貴重な機会だと実感しております。例えば前回のダイアログでは、強く活発な組織を作るにはパーパスが重要とのご助言をいただき、昨年策定いたしました。折しもコロナ禍で従業員が自社の存在意義を再認識し、社会に提供すべき価値を見つめ直す良いきっかけになりました。
今回もたくさんのご指摘とエールを頂戴いたしました。コロナ禍を経験し世の中がSDGsへの関心を高めたため、本気で取り組んでいる企業とそうでない企業が見抜かれているとのご指摘には背筋が伸びる思いでした。またお菓子やアイスは身近な幸せと大きな幸せの両方を叶えられるのだから、もっとその価値をPRすべきと言われ、大変勇気が湧きました。
持続可能な社会の実現に向けて、私たちに期待されていることに着実に取り組んでまいります。

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坂井 建一郎
株式会社ロッテ 上席執行役員

サステナビリティ

有識者ダイアログ MKIAKO AKABANE RUMI IDE YUKI URAGO JUNUCHI MIZUO

㈱ロッテでは、2018年より外部有識者の方をお招きし、ダイアログを実施しています。ダイアログでは、サステナビリティへの取り組みについて忌憚のないご意見や今後に向けたアドバイスをいただき、活動に反映しています。2020年は新型コロナウイルス感染拡大を防止するため、オンラインにて実施しました。

(注) 有識者の掲載は五十音順、肩書と経歴は当時のものです

目標ごとに詳細な記載があり、透明性や誠実性を感じます

すべてのマテリアリティに真伨な姿勢で取り組んでいて、好感を持っています。目標ごとに実績や主な取り組みについて、詳細な記載があり、透明性や誠実性を感じます。今後は、取り組みがまだ十分でない内容についても、方針や計画などを開示することで、さらに情報開示が拡充されることを期待しています。また、様々な施策の苦労話や裏話も紹介してはいかがでしょうか。例えば、「食の安全・安心」では、国際基準に加えて独自の基準を設定しようとしています。先進的な取り組みだけに、試行錯誤した点なども、積極的に伝えてほしいです。「従業員の能力発揮」の女性活躍では、風土改革が遅れていたと自己反省を開示しています。真伨に取り組んでいるからこその気づきだと思います。他社の参考にもなり、社会全体への波及も期待できます。
「持続可能な調達」では、フェアカカオプロジェクトを進められていますが、カカオ豆は熱帯性の植物で、生産地の多くは発展途上国や最貧国で、世界中の消費者や人権団体が注目している領域です。買い付け元など、一歩踏み込んだ情報を開示することで、活動の説得力が増すと思います。

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赤羽 真紀子 氏

CSRアジア株式会社 日本代表
赤羽 真紀子 氏

早稲田大学で政治学と生物学を修める。様々な業種の多国籍企業のCSR 担当として通算10年以上の経験を有し、スターバックスコーヒージャパン㈱、㈱セールスフォース・ドットコム、日興アセットマネジメント㈱の各社で関連部署の立ち上げを手がける。2010年より現職

リコールの情報や内部通報などについても、開示している点が評価できます

2018年からダイアログに参加していますが、活動が年々充実してきていると感じています。サステナビリティレポートの情報も透明性が高まっており、リコールの情報や内部通報などについても、開示している点が評価できます。
「食と健康」の中で、食育に力を入れていくのは良いことだと思います。現在は、小学校の社会科見学を中心に受け入れていると聞いていますが、児童養護施設やひとり親家庭など福祉の視点も取り入れて、学びの機会をさらに多くの子どもたちに広げてほしいです。加えて、食育を通じて様々なことを伝えられると思います。例えば、賞味期限に関する正しい知識を伝えることは、食品ロスの削減にもつながります。また、カカオ豆の栽培からチョコレートの製造までの工程について伝えることができれば、子どもたちが社会や世界に目を向けるきっかけを提供できると思います。
「環境」について、再生可能エネルギーの積極的な活用については、素晴らしいと思いました。欧州の事例には、食品廃棄物をオフィスビルの電気など、再生可能エネルギーにリサイクルし、資源として活用しているケースもあります。これからも一層の取り組みを期待しています。

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井出 留美 氏

ジャーナリスト、食品ロス問題専門家
第2回食生活ジャーナリスト大賞(食文化部門)受賞者
井出 留美 氏

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学 女子栄養大学大学院)、修士(農学 東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン㈱、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。東日本大震災の際に、食料支援で食料廃棄に憤りを覚え、誕生日を冠した㈱office 3.11設立。日本初のフードバンクの広報を委託され、PRアワードグランプリソーシャルコミュニケーション部門最優秀賞へと導く。著書に『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』、『あるものでまかなう生活』など

正しい情報を、様々な場面で発信していくことが重要だと思います

ダイアログの参加は3回目ですが、サステナビリティ活動は確実に進んでいると思います。「食の安全・安心」については、従来から高い水準で取り組まれている印象です。FSSC22000は、十 分に質の高い認 証ですが、さらにLOTTE ADVANCEを導入して、品質向上を図る姿勢が素晴らしいと思います。システムを取り入れるだけでなく、それが運用・確認できる体制を目指していることも、評価できます。
食は消費者の関心が最も高い分野の一つですが、科学的根拠に基づかない情報も多く出回っている状況です。日頃のコミュニケーションや食育活動、工場見学などを通じて、正しい情報を発信していくことは重要だと思います。特に、機能性表示食品については、品質保証をしっかりと行った上で、消費者の誤解を生まないような発信を引き続き意識してほしいと思います。
また、食品ロスも近年急速に関心が高まっていますが、業界の構造的な課題もあり、難しいテーマです。また、フードバンクなどの活動も以前よりは活発になっていますが、ボランティアが中心で体制はまだまだ十分とは言えません。事業者や行政がもっと協力して取り組んでほしいと思います。

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浦郷 由季 氏

一般社団法人全国消費者団体連絡会事務局長
浦郷 由季 氏

大学卒業後、7年間の会社勤めの後、専業主婦として子育てをしながら生協の活動に関わる。生活協同組合ユーコープ、日本生活協同組合連合会の理事を経て、2017年5月より現職。厚生労働省、食品安全委員会、消費者庁、消費者委員会などの審議会等委員を務める※消費者団体の全国的な連絡組織で、くらしに関わる様々なテーマについて、審議会への委員参加やパブリックコメントの提出などを通じて消費者の立場から意見発信をしている

事業活動とSDGsの各ゴールを結び付け、しっかりと発信することが重要です

マテリアリティマップや3つのステップ、ESG中期目標は、非常に分かりやすいです。それぞれのマテリアリティに、貢献するSDGsが特定されていますが、実際にはより複合的に、様々なゴールに貢献していると思います。例えば、「持続可能な調達」は、貧困の解決や教育の普及にも貢献していないか、掘り下げて考えてみることもできると思います。
企業がSDGsの達成に貢献していく上で重要なのは、事業活動とSDGsの各ゴールを結び付け、しっかりと発信することです。例えば、チョコレートを食べることで国際NGOを通してカカオの産地を支援できるなど、製品がある社会課題の解決に貢献しているかどうかは、消費者の購買行動にも影響を与えると思います。特に、若い世代は、東日本大震災や新型コロナウイルス感染症の蔓延を経験して、社会の連帯感や助け合いの重要性を感じている人が多く、エシカル消費もますます増えると思います。
また、アフターコロナという言葉が注目を集めています。感染拡大防止のために行っている在宅勤務やWEB会議などを、収束後に新しい働き方として定着させ、労働生産性の向上につなげられることを期待しています。

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蟹江 憲史 氏

慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 教授
蟹江 憲史 氏

慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科後期博士課程修了。博士(政策・メディア)。北九州市立大学助教授、東京工業大学大学院 社会理工学研究科准教授を経て、2015年より現職。2013年度からは、環境省環境研究総合推進費戦略研究プロジェクトS-11(持続可能な開発目標とガバナンスに関する総合的研究プロジェクト)プロジェクトリーダーを3年間努めた。2014年より国連大学サステイナビリティ高等研究所シニアリサーチフェロー、2020年より同非常勤教授を務める

競争力向上のための取り組みは、もっと開示を充実させるべきです

マテリアリティやESG中期目標を拝見して、全体的に真っ当で、重要なポイントも押さえられていると思います。マテリアリティ策定にあたっても、しっかりとガイドラインを使用していて評価できます。
企業は価値を創造して、評価されて、発展していく存在です。そのためサステナビリティ活動は、網羅性、マテリアリティ、競争力の3つが重要だと考えています。競争力向上のための取り組みは、もっと開示を充実させるべきです。例えば、咀嚼についてです。ガムで創業した会社ならではの視点で、健康とのつながりも明らかになっていることから高齢化社会でも非常に注目されています。そのことをしっかりと訴求することで、従業員も強みであることに気づき、新たなアイデアも出しやすくなると思います。
「従業員の能力発揮」については、働きがいを感じている社員割合は決して高いとは言えません。強く活発な組織を作るためには、パーパスが重要だと考えています。従業員参加型でパーパスを策定するなど、一体感を持った上で、イノベーションの生まれやすい自己変革ができるような強い組織を目指してほしいです。

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ピーター D.
ピーダーセン 氏

一般社団法人NELIS 共同代表
大学院大学至善館 教授
ピーター D.ピーダーセン 氏

デンマーク生まれ。コペンハーゲン大学文化人類学部卒業。1984年から日本での活動を開始。2000年に㈱イースクエアを共同創業、代表取締役社長に就任。2011年同社共同創業者に。2014年からは㈱トランスエージェント内リーダーシップ・アカデミーTACL 代表に就任。2015年からは(一社)NELIS 次世代リーダーのグローバル・ネットワークの共同代表に就任。2015年より現職。2019年より大学院大学至善館教授を務める

ダイアログを受けて:

私たち自身の価値を見つめ直し、取り組みや発信に活かすべきだと再認識いたしました

ダイアログを通して、皆様から当社に対する強いご期待を感じ、改めて気持ちを引き締めてまいります。ご指摘いただきましたように、フレームワークや先行事例に学びながら取り組みを進めると、どうしてもロッテらしさに欠けがちになってしまいます。やはり私たち自身の価値を見つめ直し、取り組みや発信に活かすべきだと再認識いたしました。特に「食と健康」は、私たちが大切にしてきたロッテバリューを具現化するテーマであり、私たちにしかできない取り組みを加速させることで、皆様のご期待に応えられるよう努めてまいります。
また、新型コロナウイルス感染拡大はサステナビリティにも大きな影響を与えました。在宅勤務など新しい働き方が半ば強制的に始まり、一気にスタンダードとなる転換期となっています。このように世の中が不安定な状況下においても、私たちのお菓子やアイスクリームが皆様の心と身体の癒しに少しでも貢献できていると実感しています。これからも世の中から必要とされる会社でいられるよう、サステナビリティへの取り組みをさらに推進してまいります。

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坂井 建一郎
株式会社ロッテ 上席執行役員 経営戦略本部長

サステナビリティ

有識者ダイアログ MKIAKO AKABANE RUMI IDE YUKI URAGO JUNUCHI MIZUO

2019年4月、5つのマテリアリティと新たに策定した「ESG中期目標」について、社外のご意見を伺うため、有識者4名とダイアログを開催しました。各人より、それぞれの視点から、㈱ロッテのサステナビリティの取り組みへの評価や、今後に向けたアドバイスを頂戴しました。

(注) 有識者の掲載は五十音順、肩書と経歴は当時のものです

非常に分かりやすい、
マテリアリティと「ESG中期目標」だと評価しています

新たに策定された「ESG中期目標」は、5つと簡潔にまとまっていて、非常に分かりやすいです。「持続可能な調達」では、カカオ豆、パーム油、紙と、重要な3点を挙げられている点が評価できます。特に、カカオ豆やパーム油など、一次産品のトレーサビリティは、食の安全・安心に加えて、持続可能な調達の観点からも大切なので、目標達成に向けて引き続き注力してほしいです。今後のアドバイスとして、環境や人権への配慮だけでなく、アニマルウェルフェアの観点からもサプライチェーンのマネジメントができるよう整えてほしいです。品質については、海外を含む全工場で認証を取得できていることは、とても素晴らしいことだと思います。「食の安全・安心」の中で掲げられている、ロッテ独自の新品質保証システムにも期待しています。今回、サステナビリティレポートを刷新させると聞いていますが、様々な取り組みを一層開示してほしいです。例えば、取り組みめたばかりの内容でも開示することで、社内外の対話をより活発なものにしてほしいです。

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赤羽 真紀子 氏

CSRアジア株式会社 日本代表
赤羽 真紀子 氏

早稲田大学で政治学と生物学を修める。様々な業種の多国籍企業のCSR担当として通算10年以上の経験を有し、スターバックスコーヒージャパン㈱、㈱セールスフォース・ドットコム、日興アセットマネジメント㈱の各社で関連部署の立ち上げを手がける。2010年より現職

社内浸透も進めながら、目標達成を目指してほしいです

政府目標よりも前倒しの数値目標を立てられており、評価できます。一般的に、環境に関する目標は中長期的で、すぐに成果が出るものではありませんが、継続的に取り組んでほしいです。そのため、社内浸透を進めることも重要です。私自身の経験から、①様々な社内ツールを活用し、定期的に伝えることと、②財務的メリットを合わせて伝えることが、有効だと考えています。②の例として、食品ロスの削減は、コスト削減にもつながることが挙げられます。また、懇親会での3010運動など、社員が気軽にできることから意識付けすることも有効的だと思います。
「環境」について、昨年のダイアログでも申し上げた通り、まずはリデュースを意識して3Rを進めてほしいです。特に、海外での廃棄も減らすことで、SDGsの「誰一人取り残さない」を実践してほしいと思います。また、自然災害は避けられなくなっているため、避難所のQOL 改善に役立つ製品の開発や食べ方の提案なども期待しています。「従業員の能力発揮」では、社員の健康に関する指標も設けるなど、積極的に取り組んでほしいです。

宴会などで、「 乾杯後30分」と「お開き10分前」は料理を楽しみ、食品ロスを減らす運動

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井出 留美 氏

第2回食生活ジャーナリスト大賞(食文化部門)受賞者
井出 留美 氏

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学 女子栄養大学大学院)、修士(農学 東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン㈱、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。東日本大震災の際に、食料支援で食料廃棄に憤りを覚え、誕生日を冠した㈱office3.11設立。日本初のフードバンクの広報を委託され、PRアワードグランプリソーシャルコミュニケーション部門最優秀賞へと導く。著書に、『賞味期限のウソ食品ロスはなぜ生まれるのか』

より多くの方にロッテの魅力を知っていただくためにも、
ロッテならではの取り組みを発信してほしいです

全体を通して分かりやすく、目標達成の見通しが立っていることが伝わってくる内容と評価しています。「食の安全・安心」は、消費者にとって大切なテーマなので、引き続き取り組んでほしいです。特に、生産現場で当たり前にできていることと、それをきちんと検証することが重要です。一方で、食品は様々なリスクがつきものです。消費者とのコミュニケーションは、店頭を活用することが非常に有効だと思うので、今後も意識してほしいです。「食と健康」については、食育を様々な場でこれからも展開していき、体験型など記憶に残りやすい方法で進めていってほしいです。 マテリアリティの取り組みを推進し、より多くの方にロッテの魅力を知っていただくためにも、ロッテならではの取り組みを発信してほしいです。
例えば、「噛むこと研究室」を設置されていますが、噛むことの効果を高齢者をはじめ多くの方に伝えることは、健康寿命延長への貢献につながるのではないでしょうか。「持続可能な調達」の観点では、カカオ豆の取り組みなど、もっと積極的に開示することが重要です。

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浦郷 由季 氏

一般社団法人全国消費者団体連絡会事務局長
浦郷 由季 氏

神奈川大学経済学部卒業。7年間の会社勤めの後、専業主婦として子育てをしながら生協の活動に関わる。生活協同組合ユーコープ、日本生活協同組合連合会の理事を経て、2017年5月より現職。厚生労働省、食品安全委員会、消費者庁、消費者委員会などの審議会等委員を務める※消費者団体の全国的な連絡組織で、くらしに関わる様々なテーマについて、審議会への委員参加やパブリックコメントの提出などを通じて消費者の立場から意見発信をしている

正しいステップを踏んで、
マテリアリティの策定ができていると評価できます

正しいステップを踏んで、マテリアリティの策定ができていると評価できます。現在掲げられている課題の他には、プラスチックごみの問題が世界的な関心を集めています。ロッテとしての対応を今後検討してほしいです。
5つのマテリアリティを策定されていますが、事業活動の担い手は従業員であり、「従業員の能力発揮」はすべての基盤となる最重要の活動と捉えるべきです。「健康経営優良法人2019~ホワイト500~」にも認定されていますが、健康経営をさらに進め、従業員満足度を上げてほしいです。また、2016年にダイバーシティを推進する部署「いきいき活躍推進課」を設置されていますが、取り組みや成果について社内外へ報告されることを期待しています。特に、男性の育児休業取得の文化・風土を作ってほしいと思います。男女問わず、様々なライフステージでも活躍できる企業となることで、組織の価値も上がり、就職を考えている学生にとっても、より注目される企業になると思います。トップの強いリーダーシップのもと、進められることを期待しています。

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水尾 順一 氏

駿河台大学名誉教授・博士(経営学)、株式会社ダイセル社外監査役、株式会社西武ホールディングス企業倫理委員会社外委員
水尾 順一 氏

㈱資生堂から駿河台大学教授を経て、2018年3月末退職、現在に至る。日本経営倫理学会副会長、㈱西武ホールディングス企業倫理委員会社外委員、一般社団法人経営倫理実践研究センター首席研究員、2010年ロンドン大学客員研究員他。著書『サスティナブル・カンパニー~「ずーっと」栄える会社の事業構想』㈱宣伝会議など多数

ダイアログを受けて:

力強く「ESG中期目標」達成を推進してまいります

サステナビリティへの取り組みを加速させるために、「ESG中期目標」を新たに掲げました。今年度より目標達成に向け、具体的なアクションをスタートさせたところです。今回のダイアログでは、私どもの目指す方向性が社会からの期待に添うものであるとのご意見をいただきましたので、目標達成に向けて力強く推進してまいります。
一方で、具体的なアクションに関するヒントやアドバイス、また、私どもがまだ手を付けられていない課題など、沢山の貴重なご助言やご意見をいただきました。特に、プラスチックごみの問題については社会からの注目度も高く、今後の方向性について社内の議論を深めてまいります。その他のご助言やご意見についても引き続き検討するとともに、今後も定期的にダイアログを実施し、社外からの忌憚のないご意見に傾聴しながら取り組んでまいります。

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坂井 建一郎
株式会社ロッテ 上席執行役員 経営戦略本部長

サステナビリティ